剣と魔法のファンタジー異世界が舞台のヒロイックバトルものです。
本作の主人公の性格は、あなたが選んだ選択肢によってコロコロ変わります。
最後まで善人であり続けるのは大変です。色々ガマンしなければならないのです。
もちろん悪人上等な方は思うがまま暴れまわって頂いても結構ですよ。それではどうぞ。

 

 

 

 

 

≪序文≫

あなたは独りきりで旅を続ける謎の戦士です。
正義か、はたまた悪か。
その性格や考え方、素性や目的などは今は一切明かせませんが、その強さは本物です。
得意の戦闘スタイルは片手持ちの戦斧による肉弾戦。
防具は動きやすい軽装の皮鎧のみ。
盾は動きの邪魔になるだけだと特に好んでは使いません。

そんな腕っぷし自慢のあなたですが、とある経緯で会得した火炎龍の召喚魔法も特別に扱う事ができます。
しかし、これは途中特に回復の手段を用いない限り、作中で使用できるのはただの1回きりです。
奥の手の使い処はよく考える事をお勧めします。

他にも本作では、あなたが戦闘で受けるダメージの状態を4つの段階として管理していただきます。
最初は【無傷】ですが、そこから1段階ダメージを受けると状態は【軽傷】へと移行します。
更にもう1段階深いダメージを負えば【重傷】となり、とても危険な状態です。
そこから更にダメージを負ってしまえば最後、主人公は【死亡】してしまいます。
こうなれば文字通りのゲームオーバーです。ご注意ください。

また、この世界には不思議な効果を発揮する様々なマジックアイテムも存在します。
地域によりその品ぞろえは様々ですが、比較的どこでも手に入りやすい定番アイテムをここではご紹介しておきます。
なお、あなたは現時点ではこれらを所持していません。

・ポーション
(1つ消費につき体の状態を1段階回復させる事ができる。【軽傷】なら【無傷】に、【重傷】なら【軽傷】まで戻る)

・マジックポーション
(1つ消費につき尽きた魔力を全回復させる事ができる。前述の魔法の使用回数の回復がこれにあたる)

これら基本的な状態回復薬に関しましては、本作では特にシチュエーションによる使用の制約等はございません。
読者であるあなたが、ご自身の判断でお好きな時に自由に飲んで回復させてください。
たとえ激しい戦闘の途中であっても、すぐさま懐から取り出して飲む事が可能です。
しかし一旦【死亡】まで到達してしまえば、あとはどれだけ慌てて飲んでも遅い事だけは一応ご忠告申し上げておきます。

それでは拙い作品ではございますが、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

 

 

 

 

 

孤独の戦士

作:緒方直人

 

 

 

 

 

 


草もまばら。いつ果てるとも知れない荒地を、俺は独りきりで歩き続けている。
乾いた風が、昨日の戦いでついたばかりの汚れた傷痕を容赦なく抉り掠めていく。
洗い拭えるような川や湧き水など、もう随分と見ていない。
こんな事なら昨日のアイツらをもっと締め上げて、水辺の場所くらい聞いておくんだった……

俺がそんなつまらん後悔に浸っていた矢先、ふと顔を上げるとようやく遠くに小さな村らしきものが見えてきた。
だが、どうも様子がおかしい。
村中がどこもかしこも慌ただしく荷造りをしている最中だったのだ。
見れば怪我人も多く、とても只事ではない雰囲気だ。
俺はその村に着くと、村人を指揮していた中年の男に何事かと尋ねてみた。

「ゴブリン盗賊団がこんなところにまで手を伸ばして来たんだ! この村ももう御終いだ! 早いとこ逃げなきゃ、みんな身ぐるみ剥がされて殺されちまうんだよ!」

聞けば昨晩、数匹のゴブリンどもに突然夜襲をかけられたのだという。
山向こうの岩山に最近アジトを構えて住み着きだしたという、ゴブリンの盗賊団一味の仕業らしい。
昨晩はなんとか村の若い衆が総出で追い払ったものの、そいつらはおそらくただの斥候。
逃げた奴らがすぐに本隊へと連絡を付けて、きっと今度は総がかりで村を襲ってくるに違いない。
だから一刻も早く荷物をまとめて遠くまで逃げるのだと、その男はまくしたてた。

そんな折、向こうの方で急に騒ぎ出した人だかりがあった。

「……ダメだ! おとなしくしていろ! もうあいつの事は諦めるんだ!」

「い、いやだ……俺は行くぞ……エルザ……あぁエルザ……!」

見れば、傷だらけの若者を周囲の者が必死に止めようとしている。

「ありゃあもうすぐ結婚するはずだった長老の孫、ポポムだよ。可哀想になぁ。婚約者だったエルザが、昨晩のゴブリンに連れて行かれちまったんだ」

さて、俺は……

→すぐにそのゴブリンのアジトへ向かう 2へ
→この村で水や食料、金貨などを強奪する 3へ
→面倒事は御免だと、早々にこの場を立ち去る 4へ

 

 

 

 

 

 


事情を聞き興味を持った俺は、更に詳しい話を聞く事にした。
俺がそのゴブリンどもを退治してやると言うと、その男は多分に疑わしいといった目付きで俺を見つつ、適当にあしらうかのように早口でしゃべりだす。
まぁ当然の反応だろうが、流浪の俺にとってはいつもの事だ。慣れている。
盗賊団のアジト、そのおおよその総数、親玉は怪力無双の荒くれ者ゴブリンキングだといった大まかな情報を、俺はその男から聞き出した。

村を後にし、俺は荒地を急ぐ。
ふと、腰の皮袋が地面へ落ちた。おっと、縛っていた紐が切れたようだ。
拾い上げて中身を確認する。中には間違いなく、金貨【7枚】が入っていた。
紐を結び直すと、俺はゴブリンどものアジトがあるという岩山を目指し更に歩みを進めていく。

→ 5へ

 

 

 

 

 

 


俺は村人どもをじろりと一瞥すると、背中の戦斧をぬぅっと突き出し声高に怒鳴り上げた。

「まずは水と食料だ! それと金貨3枚! そいつでこの俺様がゴブリン退治を引き受けてやろうじゃあないか! さぁ! とっとと出しやがれ!」

いきなり光りモノを突き付けられた目の前の男は、ひえぇぇっ?! と震え上がりその場にへたり込んでしまった。
ざわつく村人どもを俺は更に一喝する。
やがて小柄で白髭を蓄えた老人と目があった。ふむ、おそらくあいつが長老か。

「……貴様のような得体の知れないゴロツキに払ってやる金などない。すぐにここから出てってくれ!」

まったく。せっかくこの俺様がひと働きしてやると言っているのに。
こんなに親切な正義の味方様を前にして、こいつらは真っ当な報酬すらも払う気がないと言うのか。
呆れた俺は、この田舎者どもにこの世の道理を教えてやる事にした。
手近な女を捕まえて、その細い首根っこに戦斧の刃をピタピタと当ててやる。
どうだ、これで少しは考えを改めただろう。

「……わかった。おいアバニ。持って来い」

苦々しい顔で長老が若者の名を呼ぶ。
そいつが荷物の中から小さな袋を持って来て長老に渡した。
中に手を入れ、金貨を取り出そうとする。

「待て、気が変わった。やっぱりその袋ごと俺に寄こせ」

バカな奴らだ。言われて財布ごと目の前に持ってくるなんてマヌケにも程がある。
せっかく情けをかけてわざわざ俺様から先に額を提示してやったというのに。
諦めたように首を力なく振った長老が、袋を俺に差し出す。
俺はその袋をむしり取ると、中から金貨と、それから値打ちものそうな指輪を1つ抜き取り、残りの小銭は親切にも投げ返してやった。
……ほう、6枚か。かなり溜め込んでやがったもんだ。確認しといて良かったぜ。

これで今の俺の手持ち7枚と合わせると、金貨は全部で【13枚】になった。
ついでに【指輪】も1つ手に入れた。これはデカい町に着いたら売り飛ばすとでもしよう。

こうして無事に仕事の報酬を受け取った俺は、更に村人どもの厚意に甘えて食料をむさぼり食い、水もたらふく飲んでしっかりとこれからの戦いに備えた。
【俺は食事を済ませた】のを忘れずによく覚えておく事。

気になっていた汚れも洗い流し、残った水もしっかり皮袋に詰めておく。
よしよし、これで準備も万端だ。

→約束通りにゴブリン退治に向かってやる 5へ
→約束など守らずにこのまま遠くへ逃げる 4へ

 

 

 

 

 

 


数日後、風の噂に俺はあの村の惨状を聞いた。
村はゴブリン盗賊団の襲撃を受けてたちまち壊滅してしまったらしい。
家は焼かれ、物資は残らず奪われ、そりゃあ悲惨な有様だったそうだ。
ま、この俺とはもう何の関係もない事だがな。
こんな物騒な世に生まれたんだ、俺はこうして今日も明日も賢く安全に生き抜いていくのさ。
場末の酒場にて俺はそう独り愚痴ると、安酒を一気に煽る。
もうずいぶんと使っていない自慢の戦斧に浮いた錆びが、今日もまた一段と見る俺の瞳を赤黒く濁らせていくのだった。

≪終劇……?≫

 

 

 

 

 

 


半日ほどかけて荒地を抜けると、やっと道が道らしくなってきた。
アジトの岩山が段々と近づいてきた。もうすぐそこだ。
だがそんな折、ふと見下ろした山道のすそ野に小規模だが町らしきものがあるのが見えた。
目的の岩山とはだいぶ離れた方角だ。あそこに寄っていくとなるとかなりの時を食うだろう。
どうするかと俺は考える。
寄っていけば何より久々の真っ当な食事にありつけるはずだ。
それに愛用の戦斧も、このところの連戦続きで刃こぼれがかなり酷い。
手持ちのポーションなどのマジックアイテムも、とっくに全てを使い果たしてしまっている。

→このまま急いで岩山へと向かう 6へ
→町へ寄ってゆっくり戦いの準備を整える 7へ

 

 

 

 

 

 


今の俺には一刻も早く着かずにはおれない理由がある。
疲労に鞭打ち、俺は更に休まず歩き続けた。

俺は今日、どこかで食事をしてきているだろうか。
既に済ませていれば問題は無い。腹いっぱいの俺は力強く大地を踏みしめ前進していく。
だがもしまだ何も口にしていないのであれば、飢えと乾きに苦しむ俺は極度に疲労する。
外傷さえ無いものの、おそらくは深い傷を受けたのと同等の戦力しか残らないだろう。
その場合は今後、回復の手段がない限り戦いにおいて俺の今の状態は【重傷】と同じに扱う事。
これは次に敵からの一撃を受ければ命は無いといったギリギリの状況を意味する。
充分に覚悟せねばならない。

→ 11へ

 

 

 

 

 

 


俺は岩山への道をそれ、山道を降る。
だいぶ陽が傾いてきた頃になってやっと町へと辿り着いた。
なかなか立派な防壁が全体を取り囲んでいる強固な町だ。
おそらくゴブリンどもの襲撃に備えて急遽作られたんだろう。
これならばそう易々と陥落はすまい。
俺はそんな平穏な町へと足を踏み入れた。

→鍛冶屋へ行く 8へ
→道具屋へ行く 9へ
→店には寄らず腹ごしらえだけしていく 10へ

 

 

 

 

 

 


町の鍛冶屋へとやってきた。
でっぷり太った禿げ頭のオヤジに愛用の戦斧を見せる。

「こいつはだいぶくたびれてますなぁ。少々お時間かかりますがよろしいですか。お代はこれだとそうですね……金貨4枚は頂きましょうか」

ここでは金貨を【4枚】支払えば、俺のくたびれた戦斧を見違えるほどに修繕してもらえる。
切れ味も格段に増し、そこらの粗末な防具などは意にもせず真っ二つに出来る事だろう。
その場合は【戦斧の切れ味が増した】のを忘れずに覚えておく事。

→道具屋へも行く 9へ
→もう店には寄らず町を出る前の腹ごしらえに向かう 10へ

 

 

 

 

 

 


「いらっしゃい、何にするかえ」

町唯一という、マジックアイテムを扱う道具屋へとやってきた。
しかし店の中はかなり陰気くさく、カビくさい。
客も見当たらず、店番の老婆が1人いるだけだ。
俺もこういう雰囲気の店は嫌いじゃないが、それにしてもこれは酷い。
棚の陳列物もほとんどがガラクタばかりで役に立ちそうなのはこれくらいしかなかった。

・ポーション 金貨【2枚】
(1つ消費につき体の状態を1段階回復させる事ができる)

・マジックポーション 金貨【2枚】
(1つ消費につき尽きた魔力を全回復させる事ができる)

ふと、棚の一番奥に見慣れないものを見つけた。
透明な小瓶に干からびた植物の根のようなものが1本入っているだけだ。
なんだ……? 

「ふぇっ、ふぇっ。それはマンドラゴラの根と言いましてな。ここら以外では滅多に取れない貴重な薬草。一口食べさせるだけで、相手は何も隠し事ができずに全てを白状してしまうんですじゃ。都のお役人さんらはよく罪人用にと重宝して下さってましてな……」

聞いてもいないのに老婆はとうとうと語りだす。
自白剤……そういうのもあるのか。 

・マンドラゴラの根 金貨【4枚】
(食べさせた相手を昏睡状態にし、隠し事をしゃべらせる)

買うとすればこれらの3つからだろう。
ちなみにどれも現品限りで、同じものを複数購入する事はできない。
買った物は忘れずに覚えておく事。

→鍛冶屋へも行く 8へ
→もう店には寄らず町を出る前の腹ごしらえに向かう 10へ

 

 

 

 

 

 

10


せっかく町へ寄ったのだからと、俺は酒場に足を運んだ。
もうだいぶ陽も暮れてきて、中は客でごった返している。
俺は適当に座ると一通りの注文を済ませ、何日かぶりのちゃんとした料理を堪能した。

そんなせっかくのいい気分だったのに、帰り際に隣のチンピラどもから下手な因縁を付けられた。
腹ごなしの運動にはちょうどいいかと、路地裏に引っ張り出してしこたま殴り倒してやる。
この俺様に喧嘩を売ったんだ。ファイトマネーの1つでも頂戴しとかねば気が済まん。
俺は1人が生意気に指にはめていた安っぽい指輪をむしり取った。
まぁいくらにもならんだろうが一応貰っといてやる。
【指輪】を1つ手に入れた。もっとデカい町へ行ったら売り飛ばすとでもしよう。

気付けばすっかり真夜中になってしまっていた。
これでは山道など登れようはずもない。
まぁ薄々こうなる事は判っていたのだが仕方あるまい。
今晩は宿に泊まるとして、明日の朝ゆっくり出かけるとするか。

→ 11へ

 

 

 

 

 

 

11


ここがゴブリン盗賊団のアジトか……
山道をひたすら登り続け、やっとの事で俺は中腹の洞窟まで辿り着いた。
どうやらちょうどあの村を襲撃に行く準備を整えていたのだろう。
入り口では、既に何十匹ものゴブリンどもが銘々手に武器を携えひしめいていた。
短剣に棍棒、弓に盾に兜までと、生意気にもなかなかの重装備のようだ。
俺の接近に気付くと、たちまち奴らは殺気立ってやかましく騒ぎ出す。

「人間がたった1人で来るとはいい度胸だなギギィ!」
「俺たちが泣く子も黙る盗賊団と知ってんのかギギィ!」
「生きて帰れると思うなよギギィ!」

……やれやれ。やっぱありきたりな台詞しか出てこんか。
もうちょっとマシなオツムに生まれ変わって、出直してくるといい!!

→自慢の戦斧で躍りかかる 12へ
→とっておきの火炎龍の召喚魔法をお見舞いする 13へ

 

 

 

 

 

 

12


俺は自慢の戦斧を振りかざすと、ゴブリンどもの群れへと猛然と突っ込んでいった。

ズザッ! ザシュッ! ズバァァッ!!!

ゴブリンの腕が、脚が、胴体が、そして頭が。
俺の戦斧が風を斬る度、勢いよく空高くへと弾け飛んでいく。

ぎぇぇぇ! ぎゃぁぁぁ! 助けてくれぇぇぇ!

この程度この俺にとってはせいぜい雑草を刈り取るような作業に過ぎない。
ものの数分と立たぬうちに、俺はそこらにいた雑草どもを1匹残らず刈り尽くした。
しかしこれだけの数を相手にさすがの俺も無傷とまではいかなかったようだ。

俺は負傷した。まだ傷を負ってない無傷の状態ならば【軽傷】に。
既に軽傷を負っていれば【重傷】となる。
もしも既に重傷の状態だったのならば俺の冒険はここまでだ。残念だが本を閉じる事。

俺はまだかろうじて息のあるゴブリンを吊し上げ、親玉の居場所を吐かせようとする。
だがなかなか口を割ろうとしない。雑魚のくせに強情な奴だ。
俺は何かこんな時に役立ちそうなアイテムを持っているだろうか。

→持っている 14へ
→持っていない 15へ

 

 

 

 

 

 

13


これだけの数、相手をするのもちと面倒だ。ならば久々にこの手を使うとするか。
俺は口の中で短く呪文を詠唱した。
たちまち体中の血が沸騰するかのように、体の内から熱い力がみなぎる。
全身の毛が逆立ち、体全体が赤黒い光を放ちだす。
俺は左手をゴブリンども目掛けてかざすと、最後の呪文を声高に叫んだ。

「エイルシェローム! メイルシェローム! 出でよ我が僕、サラマンダァーッ!!」

たちまち俺の手の平から火炎龍サラマンダーが出現する。
驚くゴブリンども。龍はそんな奴らの周囲を楽しむがごとく嬉々として暴れ飛んだ。

熱ちぃぃぃぃ! 助けてくれぇぇぇぇ! ひぃぃぃぃぃ!

たちまち周囲は阿鼻叫喚の火炎地獄と化す。
龍は俺の魔力を吸いつくし、その胴体を際限なく伸ばし続けていく。
火の勢いは天を突くばかりに立ち昇り、俺が力尽き膝を付いてもなおしばらくの間、龍は既に残らず黒焦げと化したゴブリンどもを更に弄ぶように踊り続けるのだった。
ハァハァ、さすがに疲れた……
まったく……俺もとんでもない奴と契約してしまったものだ。

【俺の魔力はこれで尽きる。】
今後、特にこれを回復する手段を使わない限り俺はもう魔法を使う事はできない。

→ 15へ

 

 

 

 

 

 

14


俺はゴブリンの鳩尾に拳をぶち込み強引に口を割らせると、マンドラゴラの根をぐいとねじ込んだ。
しばらくするとすぐに効果が現れはじめ、ゴブリンの目が虚ろとなる。

「お前らの親玉はどこにいる。この奥か?」

「……うん……お頭……この洞窟の奥……2つ目の脇道を左に行った部屋……いる……」

よしご苦労。俺は用済みとなったそのゴブリンをそのままバッサリと切り捨てた。
意識が朦朧としたよい気持ちの中で、楽にあの世に行かせてやったんだ。
慈悲深い俺様にはさぞやこいつも感謝した事だろうな。

→ 15へ

 

 

 

 

 

 

15


外の雑魚を片づけた俺は、そのままアジトの洞窟の中へと踏み込んでいった。
中は松明が焚かれ、そこそこの明るさがあった。
途中でも中で待機していた雑魚ゴブリンどもが怒って群がっては来たが、数匹ずつなら造作もない。
俺はなんなく蹴散らしつつ通路を奥へ奥へと突き進んでいく。
やがて道が4つに分かれた場所までやって来た。
ここは勘で選ぶしかないだろう。俺はどの道を進むか。

→右脇にそれる道へ 16へ
→左脇にそれる道へ 17へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ
→真っ直ぐ先に続く道へ 19へ

 

 

 

 

 

 

16


行き着いたその部屋は松明も何もなく、真っ暗だった。
ちっ、まさかこんなところで待ち伏せか……?

用心していたつもりだったが、まさか足元に尻尾が垂れ下がってるなんて事までは考えていなかった。
ぐにっと何かを踏んづけた感触と、ピギャーッ! という甲高い悲鳴。
そしてその直後に、俺の体を容赦なく包み込む紅蓮の業火!

ゴォォォォォッ!

炎に身を焼かれ、俺は負傷した。
まだ傷を負ってない無傷の状態ならば【軽傷】に。
既に軽傷を負っていれば【重傷】となる。
もしも既に重傷の状態だったのならば俺の冒険はここまでだ。残念だが本を閉じる事。

真っ暗だった部屋に灯る小さな炎。ようやく状況が呑み込めた。
それは1匹のファイアリザードの吐くちろちろとした炎の舌先。
ここはゴブリンどもが飼い慣らしているこいつのペット部屋だったのだ。
眠りを妨げられたトカゲは明らかに俺に向けて敵意をむき出しにしている。
今にも飛びかかって来そうだ。もう背中を見せるわけにはいかない。

→自慢の戦斧で戦う 20へ
→火炎龍の召喚魔法で炎に対抗する 21へ

 

 

 

 

 

 

17


狭い道を進んだ先は、そこそこ広い部屋だった。
見れば多くの財宝が無造作に積まれている。盗み集めた財宝の保管場所のようだ。
ゴブリンは1匹もいない。いや隅の方に1人だけ動く人影があった。
見れば小柄なエルフの少年だった。
首輪をされ、太い鎖でつながれている。

「どうした。ここで何をしている。お前もゴブリンどもの仲間か?」

戦斧を突き付け問う俺に対し、エルフはぶんぶんと首を横に振って答える。
そして身振り手振りでこの鎖を解いてくれと訴えてきた。
しゃべれないのか。それとも、この俺を騙す芝居か。

→戦斧で鎖を断ち切ってやる 22へ
→怪しいのでこのまま引き返す 23へ

 

 

 

 

 

 

18


「なんだぁ?! テメェどうやって入ってきやがった! 人間ごときが……たった1人でノコノコ来るたぁいい度胸じゃネェかゴラァ!!」

身の丈が俺の2倍はあろうかという、ここの親玉ゴブリンキングがその部屋にいた。
怒り狂って掴みかかろうとするのを軽くいなし、俺は戦いやすい外まで奴をおびき出す。
武器であろう巨大な棍棒を手に取り、奴は俺を追って洞窟の外まで出てきた。
手下どもの無残な屍の山を目の前に、奴もすっかり憤怒ここに極まれりといった様子だ。
よし、ここまでは狙い通り……

「こいつは全部テメェの仕業かァ! 俺様の手下をよくも……覚悟は出来てんだろうなゴラァ!!」

ゴキボキと首の骨を鳴らすと、ゴブリンキングはおもむろに抱えた棍棒を最上段へと振りかざした。
俺は……

→横に避けて後ろへと回り込む 28へ
→攻撃を真正面から受け止める 29へ
→火炎龍の召喚魔法をお見舞いする 30へ

 

 

 

 

 

 

19


真っ直ぐ進んだ道の先には、ボロボロになった扉があった。
中からはなんとも不快な腐臭が漂ってくる。
嫌な予感しかしなかったが、仕方なく扉を開ける。

ぐぉっ?! ……やはりか。
そこはいわゆるゴブリンどもの排泄物捨て場であった。
描写するのもためらう、ありとあらゆるモノが山と積まれている。
なんできちんと外へ捨てに行かないのだこいつらは……
もちろん、こんな所には誰もいなかった。

→すぐに引き返す 26へ
→我慢してもう少し調べてみる 27へ

 

 

 

 

 

 

20


たかがトカゲ1匹に臆する俺ではない。
俺は戦斧を横薙ぎに構えてじっと相手の動きを待つ。
こちらがワザと一瞬力を抜いて膝をついたのに釣られ、ファイアリザードは俺の首元目掛けてジャンプ!

ザシュッ!!

すかさずそこを横一閃!
俺の戦斧が奴の柔らかい腹を真一文字に切り裂いた。
そのまま地に落ちたトカゲは、やがてぴくりとも動かなくなる。

ふぅ、余計な手間かけさせやがって。
一通り見回しても、このトカゲ部屋には他に何もいない。
無駄足だったようだ。俺は戻り、他の道を進む。
当たり前だが、俺は一度行った場所へ二度行くような真似はしない。

→左脇にそれる道へ 17へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ
→真っ直ぐ先に続く道へ 19へ

 

 

 

 

 

 

21


炎には炎だ! 火炎龍を従えるこの俺様に出会った事を後悔しな!
俺は火炎龍サラマンダーの召喚魔法を唱え放った。
しかし、それはこんな狭い洞窟内では決して使ってはならない魔法だった事を俺はすっかり失念していた。

ゴォォォォォォオォッ!!!

荒れ狂うサラマンダーは確かに目の前のファイアリザードを一瞬で焼き尽くした。
だが、たったそれだけの生贄でこの呼び出された暴れ龍が満足するはずがなかったのだ。

ギュォォォォッ! グワォォォォオオオオオンンン!!!!

『今度は貴様の命をよこせ!!!!』
そう言わんばかりにサラマンダーは次なる贄を求めて今度は俺自身に襲い掛かってきた!
もはや自分でも召喚が止められない!
しまったァ! まさかこんな事にィィィ!? ウボァーーーッ!!!
俺の体は、さっきのトカゲとまったく同じ運命を辿る事になった。
体の状態がどれだけであろうと関係ない。
俺の冒険はここまでだ。残念だが本を閉じる事。

 

 

 

 

 

 

22


俺はエルフの少年がつながれた鎖に向かって戦斧を振り降ろした。
俺はどこかで戦斧の切れ味を増してきているだろうか。

→戦斧の切れ味は増している 24へ
→そんな事はしていない 25へ

 

 

 

 

 

 

23


こんな場所で鎖でつながれてるというのが信用ならん。
きっと財宝を盗もうと近づいた奴には正体を現してガブリとか、そんなクダらん罠に違いない。
悲しそうな目をして俺を騙そうとするそいつをそのままに、俺は道を引き返す。

やれやれ、とんだ道草だった。次はどちらへ行こうか。
俺は道を選び直す。
当たり前だが、俺は一度行った場所へ二度行くような真似はしない。

→右脇にそれる道へ 16へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ
→真っ直ぐ先に続く道へ 19へ

 

 

 

 

 

 

24


ギャリンッ!

俺は戦斧で軽々と鎖を断ち切ってやった。
エルフの少年は大層喜んだ様子で、しきりに俺に頭を下げている。
ふむ、どうやら本当にただ捕まっていただけだったか。
しかし何故、すぐに殺されずにこんな所で……

理由はすぐに判った。
その少年が俺の体に手を触れると、おもむろに体がぽっと暖かくなってきた。
エルフの少年はヒーリング能力の持ち主だったのだ。
そうか、このためにこいつはゴブリンどもに飼われていたのか。

「なんだ、礼のつもりか?」

少年は今度は嬉しそうにぶんぶんと首を縦に振ったのだった。

俺の体の状態がいくらか回復した。
既に軽傷を負っていれば【無傷】に。
重傷であれば【軽傷】の状態にまで戻る。

もう中のゴブリンは粗方片づけたと告げると、少年はまたもぺこりと行儀よく一礼し、元気よく外へと逃げて行った。
さて、ここの親玉はどこにいるのだろう。次に行く道を俺は選ぶ。
当たり前だが、俺は一度行った場所へ二度行くような真似はしない。

→右脇にそれる道へ 16へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ
→真っ直ぐ先に続く道へ 19へ

 

 

 

 

 

 

25


ガギッ!

俺の戦斧は鈍い音をたてただけで、鎖はびくともしなかった。
見れば刃もボロボロに刃こぼれしてしまっている。
くそっ! つまらん情けなどかけてやるのではなかった!
腹が立った俺はそのままエルフを置いて部屋を出る。

まったく……ここの親玉はいったいどこにいる?
俺は道を選び直す。
当たり前だが、俺は一度行った場所へ二度行くような真似はしない。

→右脇にそれる道へ 16へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ
→真っ直ぐ先に続く道へ 19へ

 

 

 

 

 

 

26


こんな場所にロクなものがあるとはとても思えない。
俺はすぐに扉を閉めて道を引き返した。

まったく……ここの親玉はいったいどこなのだ。
俺は道を選び直す。
当たり前だが、俺は一度行った場所へ二度行くような真似はしない。

→右脇にそれる道へ 16へ
→左脇にそれる道へ 17へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ

 

 

 

 

 

 

27


俺は我慢して、もう少しだけここを調べてみる事にした。
曲がりそうな鼻を懸命に摘み上げて奥へと踏み入っていこうかとしたその時。

「もし……そこのお方……」

どこからか、消え入りそうな老人の声が聞こえてきた。誰だっ!
俺の目の前に薄ぼんやりとした姿の白髭の精霊が現れる。

「私はここに住んでいた、土の精霊です…… 元々は私の住処だったのを、ゴブリンに乗っ取られてしまったのです…… あろう事か、私の部屋をこのように……あぁ口惜しや…… お願いです。どうか、あ奴らを追い払ってくださいませぬか……」

なるほどそういう事か。
まぁ俺もそのためにここへ来たのだ。拒む理由はない。

「ありがとうございます…… では私からもささやかですがお力添えを致します…… その斧を、しばしお貸しくださいませ……」

土の精霊は戦斧にすぅっと憑りつくと、何やら鈍い光を発し始めた。
精霊の魔力が宿ったのか、俺の戦斧の刃に見違えるような輝きが生まれる。
これにより、俺の戦斧の切れ味は格段に上がった。
これならそこらの粗末な防具などは意にもせず真っ二つに出来るだろう。
【戦斧の切れ味が増した】のを忘れずに覚えておく事。

俺は見送る精霊を後にし道を戻る。さて、次はどこへ行くか。
当たり前だが、俺は一度行った場所へ二度行くような真似はしない。

→右脇にそれる道へ 16へ
→左脇にそれる道へ 17へ
→もう少し先の左脇にそれる道へ 18へ

 

 

 

 

 

 

28


ゴブリンキングはそのまま棍棒を俺、いや俺のさっきまでいた場所へと全力で振り降ろしてきた。
凄まじい轟音。地面を揺るがす物凄い地響き。
だが俺はその攻撃前の隙を突き、既に奴の脇を駆け抜けようとしていた。
後ろ獲ったッ! だが!?

「甘いわ人間がぁぁッ!」

奴の動きは想像以上に俊敏だった。
俺の飛び込みにしっかり反応すると、棍棒を持った手を躊躇なく離し、後ろに回り込もうとしていた俺の横っ面目掛けて的確なひじ打ちを浴びせてきたのだ。
カウンターを食らう形で、俺は派手に吹っ飛ばされる。

俺は負傷した。まだ傷を負ってない無傷の状態ならば【軽傷】に。
既に軽傷を負っていれば【重傷】となる。
もしも既に重傷の状態だったのならば俺の冒険はここまでだ。残念だが本を閉じる事。

くっ……なかなかやるな……
起き上がった俺はゴブリンキングと再び睨み合う。ならば次はどう出るか。

→相手の出方を窺う 31へ
→今度はこちらから突っ込む 29へ
→やはりここは火炎龍の召喚魔法をお見舞いする 30へ

 

 

 

 

 

 

29


ガキィィッッ!!
俺の戦斧とゴブリンキングの棍棒とが、真正面からぶつかり合った。
パワー勝負だ! 俺は全力を腕に込めて戦斧を振り抜く! だが!

ベキィッ!!!

俺の戦斧が根元から折れた?!
とっさに首をひねる! 頭部への直撃は免れた! だが!

ズシィッ!! ぐわぁぁっ!?

奴の巨大棍棒が俺の右肩を痛烈に打ち据えた! 思わず膝を付く!
ぐぉぉぉ……

「終わりだなァ人間! このまま押しつぶしてやるぜェ!」

奴は非情にも、棍棒に両手をかけそのまま全体重を乗せて俺を潰しにかかってきた。
ぬうぉぉぉぉ! 負けるぅ! ものガァァァ!!!

→体の状態が【無傷】 32へ
→【軽傷】もしくは【重傷】 33へ

 

 

 

 

 

 

30


こんな力任せのバカと、まともにやり合うつもりは毛頭ない。
そう判断した俺はすかさず距離を取ると、口の中で短く呪文を詠唱した。
たちまち体中の血が沸騰するかのように、体の内から熱い力がみなぎる。
全身の毛が逆立ち、体全体が赤黒い光を放ちだす。
俺は左手をゴブリンキング目掛けてかざすと、最後の呪文を声高に叫んだ。

「エイルシェローム! メイルシェローム! 出でよ我が僕、サラマンダァーッ!!」

たちまち俺の手の平から火炎龍サラマンダーが出現する。
驚くゴブリンキング。飛びかかってきた龍へと棍棒を振り回すが、魔力で実体化した召喚獣にそんな攻撃は通用しない。
サラマンダーはまるでオモチャを見つけた子供がごとく、嬉々として存分に暴れ飛んだ。
あれだけの巨体だ。さぞや焼き尽くし甲斐がある事だろう。

熱ぢぃぃぃぃぃ! ウガアアアアアア !
わ! わかった! 俺の負けだあああ!
だから……だから、命だけは助けてくれぇぇぇぇ!!!

残念だが一旦この世に放ったサラマンダーを止める術など俺は知りはしない。
火だるまになって転げまわる奴がやがて黙って動かなくなる。呆気なく勝負は着いた。
こうして俺はここに、ゴブリン盗賊団を見事成敗したのだった。

さて…… 俺は……

→もう用はないのでこのまま旅立つ 40へ
→洞窟の中へ急いで戻る 37へ

 

 

 

 

 

 

31


ゴブリンキングは俺の様子を窺いながらじわじわと間合いを詰めてきた。
俺も同じくゆっくりと後ずさり、間合いを保つ。
やがてぴたりと奴の動きは止まった。
さっきのような大振りが来れば今度こそ……来たっ!

単細胞な奴は、またも同じく力任せに殴り掛かってきた。
今度は横方向からの一振りだ!
ジャンプ一閃! 俺は高く飛びあがって棍棒の一振りを上にかわすと、そのまま奴の脳天目掛けて戦斧を打ち降ろす。
勝った! だが!?

「俺が脳筋のバカとでも思ったか?! バカはテメェだ!」

なんと!
奴は棍棒をそのまま投げ捨てると、傍らに落ちていた雑魚ゴブリンの盾をさっと左手に取った!
すかさずその盾で頭を守るゴブリンキング!
しまった! 奴は最初からこれを狙っていたのか! あの無駄な動きはこのため?!
俺の打ち降ろす戦斧の勢いはもう止められない!
奴は空いたもう片方の右腕で横殴りの鉄拳を放ち既に俺の体を捕えかけている! 万事休すか!!

→体の状態が【無傷】か【軽傷】 34へ
→【重傷】だが戦斧の切れ味は増してきている 35へ
→そのどちらでもない 36へ

 

 

 

 

 

 

32


「この俺と真正面から力比べしようたァ、バカも大バカだなテメェもよォ! 俺様最強ォ! 俺の怪力世界一ィィ! ガーッハハハハハァ!!」

チッ、チッ、チッ……

「あぁん?! こんな時に舌打ちだぁ?」

「世界一の怪力と言ったな…… 残念だが、ならばたった今からお前は世界で二番目だ!」

「?? な…… なんだァ?! 急に動かな……」

ゴブリンキングの腕の動きがピタリと止まった。いや、俺が止めたのだ。
俺の腕の、脚の、背中の、体中の筋肉が一回り、二回りと盛り上がっていく。
噴き出す汗という汗がすぐに水蒸気と化し、もうもうと体表から立ち昇っていく。
俺の真の力…… とくと知るがいい!! これが俺の全力だあぁッ!!! 

「ウガァッ?! バ、バカなぁぁぁ! この俺が、力で押し負けるなんてぇぇ!」

呼吸などはしない。全身に蓄積された酸素が尽きるまで筋肉という筋肉を絞り上げて奴をその棍棒ごと押し返していく。
奴の丸太のような両足が、ガリガリと土を削りつつ後退させられていく。
全身総毛立ち、息も絶え絶えとなったゴブリンキング。
奴は棍棒から弱々しく手を離すと、呆然といった風でその場から後ずさる。
やがて哀れなその元世界一は、我を忘れて破れかぶれに掴みかかって来た。
俺は抱えたままだった棍棒をそのまま高く掲げると、無防備に突っ込んでくる奴の脳天に深々と叩きつける!

グジャッ!! ベキベキィッ!!

奴の頭蓋骨が陥没する音と、叩きつけられた棍棒が粉々に砕け散る音とが同時に響き渡る。
そのままドウッ! と奴の体は地面へと崩れ落ちた。
……ぷふぅっ! 勝ったぁっ!!!
こうして俺は、ゴブリン盗賊団を見事成敗したのだった。

さて…… 俺は……

→もう用はないのでこのまま旅立つ 40へ
→洞窟の中へ急いで戻る 37へ

 

 

 

 

 

 

33


勝算がないわけじゃなかった。
だが、それがうぬぼれだと気付くのがほんの少し遅過ぎただけだ。

グシャッ! ボキボキィ!

今の俺に、ゴブリンキングの巨体を押し返せるほどの余力は残されてはいなかった。
たちまち鎖骨が砕け、そのまま肋骨、そして最後は背骨までもが無残に潰れ砕けていく。
後の岩山には、真っ二つに千切れた俺の死体が虚しく横たわるだけだった。
俺は問答無用で敗北した。残念だがここで本を閉じる事。

 

 

 

 

 

 

34


なにくそっ!
俺は空中で猫のようにくるりと体を横に錐揉み回転!
しなやかな動きで戦斧の軌道をそらせつつ、見事バランスを保つ。
見えたッ!!
俺はそのまま回転の勢いをゴブリンキングの鉄拳に向けがっちりと戦斧の刃を合わせた!

ギィヤァァアアァァ!!!

とっさのカウンターが見事に決まり、奴の拳が指ごと縦に裂け千切れる!
ひるんで隙だらけの奴のドテッ腹に、今度は着地した俺の止めの一撃が綺麗に決まった!

ア…… アガガガ……
言葉にならぬ怨恨を残し、ゆっくりとその場に崩れ落ちたゴブリンキング。
勝った! 
危ない所だったが生まれ持った身体能力を駆使し、俺はここにゴブリン盗賊団を成敗したのだ。

さて…… 俺は……

→もう用はないのでこのまま旅立つ 40へ
→洞窟の中へ急いで戻る 37へ

 

 

 

 

 

 

35


体が軋む! 自由が効かない!
体力の残されていない俺はそのまま、最早全体重をかけて戦斧を打ち降ろす他に術がなかった。
ガハハハハ! ゴブリンキングの耳障りな醜い笑いが聞こえてくる。
くそっ、ここまでか……
俺は諦めて目をつぶり敗北を覚悟した。だがその瞬間!

スパァン!

思わぬ乾いた音が響き渡った。
そして直後に手元に伝わってきたこの手ごたえ! まさかッ……

ウギャァァァァァァ! なぜだァァァァァ! ?

見れば俺の戦斧が、ゴブリンキングの眉間に深々と突き刺さっているではないか?!
奴の手にした盾は、ものの見事に真っ二つに裂け落ちている!
やった! やったのか! そうか! あのおかげか……!!
強化された戦斧の切れ味が、奴を盾ごと打ち据えて俺の危機を救ってくれたのだ!

最後の断末魔を轟かせて、強敵ゴブリンキングはそのまま天を仰ぎ倒れ落ちた。
俺の勝利だ!
ギリギリの攻防戦を制し、俺はゴブリン盗賊団を見事成敗したのだ。

さて…… 俺は……

→もう用はないのでこのまま旅立つ 40へ
→洞窟の中へ急いで戻る 37へ

 

 

 

 

 

 

36


こうなればままよ!
俺は覚悟を決めて戦斧をゴブリンキングのかざした盾のド真ん中へと、渾身の力を込めて打ち降ろす!
奴がニヤリと笑った。……ような気がした。

ガギッ! 

絶望の鈍い音が虚しく響く。
俺の戦斧は完全に奴の盾によって止められてしまっていた。
すぐに空中で無防備となった俺の左わき腹に奴の鉄拳が容赦なくめり込んでくる!

ぐぶふぅっっ!

俺の体は盛大に吹っ飛ばされ、地面にしたたかに打ち付けられる!
ぐはっ! は、肺に骨が……アバラを完全に持って行かれた……
痛みに耐えかね俺は口から血反吐を撒き散らしてのたうち回る。
もうそれ以上は、何をどうしようと無駄だった。
頭上には下卑た薄笑いを浮かべる奴が俺を見下ろしそこに立っていたのだから……
俺は問答無用で敗北した。残念だが本を閉じる事。

 

 

 

 

 

 

37


激戦の疲労も顧みず、俺は洞窟の中を駆け抜ける。
まだ見ていなかった部屋もしらみつぶしに探して回る。
くそっ……どこだ……どこにいる?!

→指輪を持っているなら 38へ
→持っていないなら 39へ

 

 

 

 

 

 

38


俺はゴブリンキングの部屋の更に奥にあった小部屋のなかで、変わり果てた女の、いや元人間だったものの残骸を見つけた。
四肢はもがれ、肉は噛み千切られ、頭髪は一本残らずむしり取られていた。
かろうじて判るその顔は苦痛に歪み、この世の全てを呪わんばかりの形相を深く彫り込んでいた。

ちっ……やはり生きてはいなかったか。
ま、性悪なゴブリン相手では当然だったかもしれん。俺も考えが甘かったな。
もし生きてたなら奴隷市にでも売り飛ばしてひと儲けできたんだが、惜しい惜しい。
まぁその分、頂くものはしっかり頂いて帰るとするがな。

こうして俺は狙っていた奴隷は逃がしたものの、たんまりと溜め込んであったゴブリンの財宝を手に入れ、そのまま揚々と洞窟を後にしたのだった。

→ 40へ

 

 

 

 

 

 

39


ゴブリンキングの部屋の更に奥にあった小部屋。
俺がその扉を勢いよく開けた途端、中から甲高い女性の悲鳴が響いた。

「キャァッ!! お願い助けて! ポポム! あぁポポム! お願い早く助けに来てぇ!」

半狂乱になって怯えるその女性にかがみ込み、俺は努めて優しく話しかける。

「エルザ、だな。心配するな。俺はそのポポムとやらに頼まれてお前を助けに来た者だ」

しばらく口をパクパクさせていたそのエルザは、ようやく俺がゴブリンでない事に気付いたようだ。

「本当……ですか……あぁ……本当に、本当に助けに来てくれたのですか!」

もちろんだ……。
この俺がいる限り、悪党どもにはもう何1つ、無垢な人々の幸せを壊させはしない!

→ 40へ

 

 

 

 

 

 

40


ここにまた、悪逆非道な怪物どもの群れを叩き潰した名もなき戦士の姿があった。
自慢の戦斧を背中に担ぎ、相棒の火龍をその内に宿した、筋骨逞しき独りの男。
どこへ行き、何をするかの思惑は、誰もが知らないその旅路。
足の赴くまま気の向くままに、今日は東か、それとも西か。
男の通ったその道筋で、悪の栄えた試し無し。
明日は何処か、孤独の戦士! 天下に轟け、孤独の戦士!

≪終劇!!≫

 

 

 

 

 

【あとがきのようなもの】
ども、作者です。お読みくださりありがとうございます。
王道なヒロイックファンタジーものに挑戦してみました。
マッチョ戦士を主役にして、お買い物要素も入れて、選択肢次第では正義にも悪にもなって……と、シンプルスタンダードで軽くいくつもりが結果色々欲張ってしまいましたが、お楽しみいただけましたでしょうかサテハテ。
よろしければ賛否もろもろ出来栄えに関してのご指摘感想など送っていただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。