作:まんどう
夢現大戦
夢の世界から現実の世界を制圧せんと企む陰謀を打ち砕け!?
前書き
例によって?正月早々面白い夢を見た(去年の作品はマーテルノウェム)。
見出しでなんとなく全容は見える気もするが気にしない。
それにしても毎度、どういう記憶を整理した結果なのかは全く不明・・・なんだけど、とにかく面白かった。
夢で見た・・・って言う時点でマーテルノウェムみたいな流れになりそう、そうそのとおーり。
あちらは妙な所で改行されないように、短文で文章書いたから今見ると変な文章・・・。
いつか手直しする必要があるのかも。
今は改行を気にしないようにしている。
今回読み物の側面が強いのでというかほぼ読み物で、文章を読むのが(特に駄文が)苦手な人にはお勧めしない。
・・・この物語が他の人にとっても面白いかはわからないけど作ってみる。
本編へ→本編
主人公 脳科学研究所に勤める主任研究員。悪友の娘を引き取る。
悪友 夢を科学する第一人者。ある日幼い娘を残し失踪する。
マドンナ 学生時代、主人公、悪友と3人でよくつるんでいた。二人の憧れだった女性。材料工学のスペシャリスト。作中は単に同級生の表記が多い。
娘 色々と、本当に色々としっかりした子。難しい年頃。
それぞれがそれぞれの配偶者を得て数年経った頃、主人公の悪友が失踪する
子供のいなかった主人公夫妻はその娘を引き取るが、その数年後、主人公の妻は出て行ってしまう。
更に時が過ぎ、ある日懐かしい夢を見たことから物語が始まる・・・。
今作品は、特に導入部分の読む部分が長いので、面倒に思う方のためにかいつまんだショートバージョンをご用意しております。
長文駄文、読むのは特に苦じゃないよ、って方はこのまま
本編へ→32
長すぎるのはちょっと・・・、って方は
初日ショートバージョン→39
お好みにあわせてお選び下さい。
3
ご飯後、風呂に入りくつろいでいると、珍しく娘が尋ねてくる。
「今日は何して遅くなったの?」
「友達の資料が見つかってね。
その加減で色々読み広めていたんだよ。」
「友達・・・?あのおばさん・・・?」
娘のトーンが低くなる。
「いや!もう一人の、ロマン馬鹿のほう!」
「そうなんだ?
あのおばさんは関係ないのね?」
「え・・・っと・・・手伝って頂きました・・・が。」
娘の機嫌が悪くなるのを肌で感じ取る・・・。
何であんなに嫌うんだろうか・・・。
子供の頃からなんだよなあ・・・。
どきどき・・・→43
4
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
首の位置に移動してみた。
「なぁ・・・相棒。」
「なんだ?」
「何でここに来たんだっけ?」
「首と言えば神経の束があるからだろ?」
「脳もねえのに?」
「・・・あ゛」
そして私達はすぐ上の頭に戻ったのだった。
もっと早く言え!→34
せーのっ、おりゃっっ!
おっさん二人は足をもつれさせ、派手に転んだ!
何者かは驚いて逃げ出した!
「「何やってんだああああああああ!!」」
お互いがお互いを非難して胸倉をつかみ合う。
・・・が、まだ息が整ってないうちにやったのが悪いに決まっている。
やがてお互いまたへたり込む。
「歳だな・・・。」
「お互いな・・・。」
時は無常→73
6
「お陰で偉い人への説明を僕が代わりにする羽目になったんですからね!」
本音はそこか。
怒りが収まらないのかずっと小言を言い続ける助手を適当にあしらい、淡々と仕事をこなしていく。
今は実証データの収集以外の仕事が無いので私がここにいる必要が無い。
「・・・だったり・・・。
って聞いてるんですか!?」
まだ続いてたのか。
「まだお帰りになられてないんですよ!
主任のお客さん!」
え?そうなの?
ってか、それは最初に言うべきことじゃないのかい?
「最初っから言ってます!
偉い人の相手を・・・」
またもぐだぐだ小言を始めたので、客人の元に向かう。
ハイハイキイテルヨー→13
7
たくさんのデータを入力してはシミュレーションを繰り返し、再構築を繰り返す。
「・・・これだ。」
「何がどうなったの?」
同級生が私の横から顔を突き出す。
「・・・!」
更にその間に娘が割って入る。
「あ・・・んた、見ても分からないでしょうが!」
「・・・」
『ハッハッハ・・・ソッチハ タノシソウ ダナ。』
「え!?」
「成功した・・・とは言い難いが、まぁ小さなことからな。」
『ソウハイウガ、オレハ オマエラニ アエル ジカンヲ ナガクシテクレト タノンダ ダケダゼ』
「声が聞こえ難いけど、ロマン馬鹿なの?」
『ナンダ ソノ ヨビカタハ!?』
まぁなんだ、とりあえず会話できるようにはなった。
次はもっと!→67
「向こうには我等がマドンナ様が居るんだぜ?
今では材料工学専門だが、以前は俺達より優秀な脳機能関連のスペシャリストだったんだ。
多少のブランクがあっても彼女のスキルがあれば・・・」
ブブンッ・・・
「う゛お゛あ゛あ゛あ゛」
いきなり世界全体が激しく波打つ。
これは気持ちの良い現象じゃないな・・・。
「・・・同級生のことを余り持ち出すな。
お前がマドンナとか言うと色々厄介なことになる。
頼りになる相棒位にしとけ。
もしくはワトソンだな。」
「・・・うん?ああ、そうする。」
(・・・俺にまであたんなよ!)
何やら別方向へ向かってひそひそなじっている悪友。
・・・もしかしなくても娘か。
行動に移ろうか→63
いきなり大声で独り言を言う悪友。
悪友の目はこちらを見て任せろ、的な雰囲気を醸し出している。
・・・任せてみるか。
「いーなー!
こんな所に住めれたらいーのになー!」
悪友は顔の向きを変えずに、こちらを観察している人物の方をちらちら見る。
「やあ!君!君はこの素敵な城の住人かい!?」
「!!!」
こちらを見ていた人物らしき人影が飛び上がる。
「・・・そう・・・だよ。」
おお、会話することに成功したぞ。
「おいらここに住んでる。」
こちらを見ていたのは小さないがぐり頭の少年だった。
貴方は誰→68
10
「あ、あさの色々で・・・チェーンが壊れかけていたので・・・。
修復を・・・と。」
「付け替えたの?」
「あ、それはそのほうがいまどきの女の子らしいと換えてもらいました。
もちろん古いほうも残してあります!
そちらの小袋の中に・・・。」
一緒の袋に入っていた、可愛いポーチから古いほうのチェーンを取り出す。
「あ・・・綺麗になってる。」
ようやく笑顔になった娘に心底安堵する・・・。
乗り切れた・・・。
バタンッ!!!
あ・・・あれ?→25
「創立記念日なんだろう?」
「さすがお父さん。」
そういうのはちゃんと把握してある。
なんせ嫁が家を出て行ってから、私が全ての面倒を見ているんだから。
・・・嘘です、面倒見てもらっています。
まぁ、とにかく、家事の一切がだめな私が出来るのは、出来る限り娘の回りのことを知っておく事位だ。
・・・今日これから起きるであろう事は知りたくない気もする。
・・・って何か視線を感じる。
「・・・」
「・・・何でしょう?」
ふいっと横を向く娘。
難しい年頃ってやつかなぁ・・・。
やがて目的について電車を降りる二人。
駅からはそんなに離れてないのでいつもは歩いているが、今日は一人ではない。
「いつも歩いているんでしょ?
じゃあ歩こう。」
先手を打たれました→58
「お前が脳機能科学の専門家であるように、俺は夢を科学する研究の第一人者だったのは忘れてないな?
俺は長いこと夢を研究し続けていた。
ある時、複数の夢に奇妙な合致を見出すことが出来た。
よくよく調べていくと、その夢を見たものは、前後で性格や価値観が代わっていることが分かった。
更に、2回程その夢を見た後では、研究への協力を拒否していることも分かった。
別に研究への拒否自体はさほど珍しいことではない。
けれど、その夢に関わる人物は100%であるのはおかしいと言わざるを得なかった。
そのうち、俺自身もその夢を見るようになった。
見るように・・・と言っても都合3回程だけどな。
一度目は俺の日常行動に支障が出た。
何故その行動を取ったか後になると分からない、というものだ。
二度目は俺の日常行動が完全に制御できなくなった。
研究に没頭した頃だと思えばいい。
三度目は・・・俺はこの夢の世界に引きずり込まれていた。」
「にわかには信じがたい話ね。」
「そうだな。
恐らく俺の研究も削除されているだろうから確かめようが無い。
・・・娘は俺のロケット持っていたか?」
「ああ、持っていた。
当時2歳だったのに、あんなものを手放さなかったのは意外だった。」
懐かしい→54
「お久しぶりね、元気してた?」
「・・・やぁ、君かぁ。」
そこに居たのは今朝見た学生時代の夢にも出ていた同級生だった。
その頃いつもつるんでいた3人の紅一点で、俺達男二人は彼女に仄かな恋心を抱いていたものだ。
それが別々の大学に進む頃に、突然
『結婚しました』
だけのメール、いやその便りがそれだけだったのに心底驚いたものだった。
いや、落胆したと言うべきだろうか。
「ご挨拶ねぇ?
これでも出資者筆頭なのよ?」
「の、奥方様ですよね。」
「棘があるわねぇ。」
そういうつもりでは・・・→61
14
「とにかく、何か情報を置き換えられて、認識の出来ない何かにされた。
本人は夢の中に囚われている、と表現しているが・・・って所だな。」
「そうね・・・。
問題はどうやって助けるか?よ。」
「あいつの資料と、昨日見ていた資料とで符合する点を見つけたんだ。」
それは私達が学生時代の頃の学園長の名前だった。
「あの人・・・そんな有名な人だったの?」
「そうらしい。
特に脳科学や夢に関する論文の数が多い。
元々優秀な人材を育成するために全国から集められた学校ではあった。
が、こんな裏があったとはな。」
「私達は知らずのうちに手伝わされていたのかしらね?」
恐らく・・・→56
「俺達の夢についてさぁ!」
「まってまって・・・。
もしかして昨日の続き??」
!!?
「昨日のって・・・どういうことだ?
夢の続きだと言いたいのかい?」
「ええ!?」
「ああ・・・ようやく二人とも記憶に残るようになったんだな?」
「「!!?」」
「何度君らに会って、何度同じことを話しただろうか。」
「おまえ・・・なんで・・・」
「うちの娘は元気してるかい?」
「本人・・・なの?」
「本人だとも!14年もここに居るけどね。」
14年・・・→12
16
「ようやく目が覚めた・・・いや状況把握できたようだな。
にしても相変わらずだな、高所恐怖症。」
「ああ、状況は把握できた。
そして高所恐怖症のことはほっとけ。」
「まずどうするんだ?
俺はこちらの住人になっちまってるから、出来ることはないぜ?」
「分かっている、やるべきこともな。
・・・そういえば、娘と何を話していたんだ?
私がこちらの世界に来る時に何かを話し込んでいるのが見えたんだが。」
「あー・・・それは秘密だ。
向こうに戻れたら本人から直接聞けば良い。」
何だよそれは・・・またロマンがどうだとかか?
「で相棒、俺達は何をすれば良い?」
「学園長はこの世界に、まるで無いかのような小さな嘘をたくさん紛れ込ませている。
それを一つずつ見つけては否定していくんだ。」
そう否定だ→8
17
「ちょっと!起きてるならさっさとご飯食べちゃってよね!」
・・・いつもこうやって世話を焼いてくれる優しい娘だ。
「そんなだからお母さん逃げちゃうんだよ!」
・・・最近娘の言葉がとげとげしい、そして冷たい。
彼女は言うだけ言うとリビングに戻っていった。
「私先に行くからねー!戸締りちゃんとしてよねー!」
ぽつーん・・・。
仕方ないご飯を食べるか。
そうして食事を終え、職場である脳科学研究所に向かう。
・・・ちゃんと戸締りはした!
・・・
・・
・
「主任!ちょっと遅刻ですよ!」
・・・仕事場に着くなりいきなり小言を言われた。
おかしいな・・・時計は・・・あ、止まってる。
「そんなアナクロな物を何時までも使ってるから!」
何もそこまで→6
ああこれは凄いな。
悪友は全てのものが機械で出来ていると言っていたが、動植物、虫に至るまでとは思ってなかった。
数はそれほど多くない、というかまばらだが、見るもの全てが機械で出来ているのには圧倒される。
何より機械以上であること。
ただ置き換わっているだけじゃなく、生物としての意味をもって動いているんだ。
元々の動植物がそうであるように、機械である彼らもまた、そのように振舞っている。
そして・・・極めつけは何よりも山ほどもあるあの巨人。
ただの巨人ではなく、所々城を模した、機械の巨人だ。
「これ、無意識下で見る夢の枠を超えてないか?」
「んー・・・以前たまにこれた時分はもっと世界が広かったんだ。
今はちょっと殺風景に感じるよ。
それにしても俺もこんな凄いのは夢で見た事ないな。
光る剣を振り回す夢はあっても、ここまで細かいディテールのものは初めてだな。」
「私も空を若干不自由に飛ぶ夢は見た事あるが・・・。」
「え!?何それ!ロマンだな!?」
「まぁまた教えてやるよ・・・今は見つけるのが先だ。」
「ちぇー・・・」
「まずはあの、人・・・てか、巨人の如く歩いている城からだな。」
「だーな。」
移動する巨人型の城へ→21
19
・・・この夢を見るようになってから朝すっきり起きられるな。
夢を見るタイミングで既におきかけているのかもしれないけど・・・。
コンコンコン
「起きてる?」
「起きてるよ。」
「ご飯食べよう。
そして連れてってね。」
うーん・・・ちょっと気が重い。
「・・・返事は?」
「はい。」
「よろしい。」
そして一緒に朝食をとり、職場へと向かう。
その途中→11
20
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
どういう力が作用しているのかは分からないが、あの巨体、あの速度で動く物体の腕とは思えないほど揺れることはない。
「無粋な野郎だねぇ・・・。」
うるさいよ。
こっちはロマンだナンダと言ってる分けにはいかない事情があるだろうが。
とはいえ、外を見るのは出来ないので相棒に任せる。
「へいへい・・・ああっ!」
「ど、どうした!?」
ガシッ→グイッ→・・・・
「・・・・ヒィィィ」
「あっはっはっは!」
なんてことは無い、ただの悪戯だった・・・が私にはそれ所ではない。
顔面蒼白になりぐったりしたまま、相当な時間そこにうずくまることになった。
流石にそこまでだとは思ってなかったらしく、すまなそうにする相棒が、
「にしても何も無かったなぁ・・・?」
と話しかけてきたが、終始無言で睨むことで意思表示しておいた。
しゃべることも出来ないほどとは自分でも思ってなくて、それが精一杯だったんだが・・・。
頭に戻るには遠すぎるのでここで次の場所を選定すべきだろう。
頭の部分に戻る→34
目の位置に移動→29
首の位置に移動→4
右手の位置に移動→62
心臓の位置に移動→47
肝臓の位置に移動→77
左足の位置に移動→51
「・・・なぁ?」
ズズン・・・
「・・・なんだ?」
ズズン・・・
「・・・これどう入んの?」
ズズン・・・
「・・・さぁ・・・」
「さぁじゃねえよ?どうすんのよ??」
「私を問い詰めた所で仕方が無いだろう。
機械は門外漢も良い所だ。」
「パソコンは使うだろうが!」
「仕事以上に扱うことは無い。」
「胸張って言うんじゃねえ!
この仕事馬鹿が!」
ブブンッ・・・
「う゛お゛あ゛あ゛あ゛」
いきなり世界全体が激しく波打つ。
またも外部の影響か。
(悪かった、悪かったーって、もうそれ、すんな!
・・・え?ぉぅ・・・うん。)
また明後日の方向を向いてひそひそやっている。
あいつ用の端末は用意したが、私自身のは造ってないものなぁ。
失敗だったな。
で外野はなんて?→65
悪友は大げさにため息をつく。
「あの古びたレンチはどーよ?
なんであんなレンチで鳥や蝶が生み出せるんだ?
普通に考えてこの坊主こそが夢見てる、技師本人だろ?
そりゃ技術は持ってるだろうけど、何でもかんでも生み出せるほどか?
夢を見てる張本人だから、何でもかんでも生み出せてるんだろうよ。
それが「何にも知らない少年」って嘘でこんな姿にされてるって思わねえ?」
・・・返す言葉も無い。
「大体他に考えられないだろうが。
てことで、ぼうず、いや技師に言ってやれ。
あんたが子供であることは嘘だってよ。」
そうしよう→75
「何度も来たっつったろ。」
相棒がこの世界に通じすぎている。
「何度も来てるっつってるだろ。」
相棒があの少年を初めて見たといった。
「向こうも初めて見たっつってたろ。」
・・・
「そもそも俺との会話に違和感覚えてたのか?
ちょっとでも感じてたなら、追求するチャンスがいくらでもあったろ。
今更過ぎるだろうが。」
・・・
言い返せない・・・→22
24
彼女には前科がある・・・って犯罪的なことではなく。
本当に呼んだことがあるのだ、国家の安全を守る守護者を・・・。
どれだけ頭を下げまわったことか・・・。
「ふ・・・深く反省しております・・・。
どうか、どうか、ご容赦を・・・。」
「それに年頃の娘の胸元から引ったくりをするような変態も身内におりません。」
・・・そっちもかー・・・。
どうしよう!?忘れてた!!
その表情を見てか、娘がふっと笑う、いや嗤う、嫌な感じで。
「どうやらすっかり忘れてたって感じとお見受けしました。
結構ですとも・・・その程度のことなんでしょうから、ね゛ぇ゛・・・。」
語尾に怒気が混じり始めた・・・ヤバイ・・・マジヤバイ・・・。
「・・・あ・・・あの・・・些少ではありますが・・・。」
ドアの隙間から娘の好物のスイーツを渡す。
奥から無言で近づき、スイーツだけを受け取り、また奥に引っ込む。
駄目だったー・・・→57
25
ガチャガチャ・・・カチャ・・・
ドアガードを外していたようだ。
「・・・お帰りなさい。」
「ただいま・・・ごめんね?」
「もーいーよ。
プレゼントも貰えたし、散々謝らせたし。」
ええそうですね。
「ご飯温めなおすから一緒に食べよ。」
やっぱりやさしい子だなぁ。
食べるの待っててくれてたのだな。
「・・・ご」
「もう謝るのはなし。」
「はい。」
今日のご飯は美味かった→3
若干トーンが変わった娘にすかさず説明を入れる。
「わたくし、流行は疎いので店の店員さんに聞いて選んで頂きました。」
ジロッ
え・・・なにか・・・した?
「・・・女性の店員さん?」
またトーンが低くなった娘に首を振って全力否定。
「若い男性の店員さんでした!
彼女さんへのプレゼントならこれだと!」
「ふーん・・・」
お?表情が和らいだ。
「で・・・こっちは・・・!」
ビクッ
こ、こっちが本番・・・。
「何か印象が違うんだけど・・・?」
明らかにトーンが・・・→10
27
本当ならこの時点で結論を出してしまっていることに恐ろしく不安を感じるものだ。
ただ前提条件に、相棒の情報と、少年の「他に誰も見たことがない」という発言で絞れたようなものだ。
次からこんなに簡単であるとは思わない方が良いだろう。
まずは一つ目→75
28
少年の友達、つまり機械の人達-ロボットは、少年の言う事を素直に聞いて動く。
我々おっさんをこともなげに抱え上げ、結構なスピードでこの巨人の中を登っていく。
「う・・・お・・・お・・・はえーな・・・。」
「ちょっと・・・怖い・・・位だな・・・。」
「ありがとよ、ぼうず!」
同じくロボットに運ばれている少年が照れて笑う。
少年を運んでいるロボットは他のロボット達と比べ、何か少し違う感じがする。
妙に精巧に作られている感じだ。
人を模した、というよりは、人を作ろうとした、位の違いがある。
一番上までは大分かかるらしいので、その間色々な話をした。
少年は気付いた時には、巨人の中で暮らしていたこと。
巨人の中は壊れた機械のようなもので溢れかえっていたこと。
ロボット達は、少年が壊れた機械を組み立てることで生まれたこと。
悪友が遠くから度々様子を伺っていたことは知っていたこと。
ただ少年が覚えているのは、この2~3週間の出来事くらいであること。
「っつーか、すげーな。
このロボット達を作ったのはぼうずなのかぁ。」
少年が照れ隠しに鼻をこする。
「だからこいつら俺達の言葉に反応しなかったんだなぁ。
何で組み立てたんだ?」
興味津々→78
29
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
「なぁ・・・」
「・・・」
「なぁって・・・」
「・・・」
「外見れないなら何で来たんだよ。」
そうなのだ。
目の位置に来ると言うことは外が丸見えになる可能性が高かった。
そしてそれは現実のものとなっていた。
目の内側はガラスか何か、透明な何かで出来ていた。
おかげで下まで丸見え・・・うえ・・・吐きそう。
「奥へ行け奥へ。」
半ば蹴りだされるように追い立てられてしまった。
そしてしばらくして合流した悪友はがっかりした様子で、
「なーもねえ。」
そして直ぐ奥にある頭の位置へと戻ることに決めた。
余計なことをしたもんだ→34
「どうやってだね?」
「貴方がこの世界に張り巡らせた、嘘、を見破り、無かった事にしてですよ。」
「・・・!!」
学園長の顔がこわばる。
「成程・・・私がどうやってこの世界を自分のものにしたのか知っているのか。」
「ええ、大きな真実の中に小さな嘘を紛れ込ませていますよね。
それを絡み合わせることで、あたかも元々そこにあったかのように存在させる。
小さな嘘が重なり合って、巨大な虚像を作り上げる。
元の事実を覆い隠すほどの巨大な、ね。
それが貴方の手法です。」
「・・・ならそれがどんなに困難か分かっているだろうね。」
「・・・貴方こそ、貴方の集めた生徒達が如何に優秀か、分かっていますよね。」
「君達二人には期待していたのだ・・・。
その発想、着想がとても素晴らしかった。
君達の練り上げた理論に私の長年の研究を融合させたからこそ、この世界は私のものに出来たのだ。」
「御託はいい・・・友人を返してもらうぞ。」
「できるのならな・・・。」
やらいでか!→64
31
いつも大事に肌身離さず持っているらしい。
娘が胸元から取り出したロケットをひったくると
「ぎゃああああ!!!」
「すまん!後で返す!」
「スケベ!変態!○△□※◎・・・」
喚く娘を後に家を飛び出す。
今は一刻も早く中身を知りたい。
いつもの通勤時間より早くに出たこともあるが、何かいつもと雰囲気が違う。
・・・はて?
何か妙に視線を感じる・・・それも研究所に到着するまでずっと。
・・・
・・
・
研究所に着くと真っ先に自室に向かう。
一足早く研究所にやってきたらしい同級生と合流する。
「遅かったわね!」
電車通勤ですから!→69
・・・
・・
・
チュンチュン・・・
朝か。
今日はえらく懐かしい夢を見た。
学生時代の夢を見るなんて何時以来だろう?
コンコン。
「お父さん!もうおきてるー!?」
娘が起こしに来たようだ。
娘は16になる。
血のつながりは無い。
友人の娘を引き取ったからだ。
友人・・・か。
奥さんを早くに亡くし、仕事に没頭して子供を放ったらかしにするような奴だった。
それが突然姿を消してしまい、身寄りを無くしたこの子を私が引き取った。
あいつは・・・生きているんだろうか?
娘は・・・幼かったので恐らくは私のことを実の父だと思っているだろう。
ガチャ!→17
「つまり、彼は少年ではなく、この世界を夢見ている技師その人だと考えるのが正しいだろう。」
「・・・成程な。
技師本人が、自身の技術と年季の入ったレンチで作り上げてる、って筋じゃないんだな。
まぁ考えてみりゃ、レンチだけで何でもかんでも作り上げられるのは無理があるわな。
この夢を見る本人だからこそ、何でも作り上げられるってことか。」
「私はそう見ている。」
「・・・んなるほどぉ、ってか、おまいさんがそう結論付けなければ、俺がそういう所だったぜ。」
「・・・そうだったのか?」
「そうだよ・・・っつか、他に考えられないだろ?」
まぁそうだよね→41
34
現在は頭の位置にいる。
ここには少年が何やら作業していて、また何かを作り出しているようだ。
調査する場所は一箇所に付き一度。
二度行っても同じことを確認するだけで情報が増えたりはしない。
調査を終える→37
目の位置に移動→29
首の位置に移動→4
右手の位置に移動→62
左手の位置に移動→20
心臓の位置に移動→47
肝臓の位置に移動→77
左足の位置に移動→51
35
「ずっと、ずっと働いてきたんだ。
こいつと一緒にな。
家族も出来たが、わしにはいつでも仕事が全てだったんだ。
しかし、いや当然なんだろう、気付けばいつの間にかわしは一人だった。
家庭を顧みなかったからか?
わしにはわからん。
そうかも知れんし、そうでないかも知れん。
それほどわしは周りが見えておらなんだ。
一人きりになってある時、怪我を負ってしまい長く入院していたんだ。
体を動かせない時間が、仕事が出来ない時間がこれほど苦しいとは思わなかった。
なんせ何もないわし自身のことを、見つめなおす時間が、見つめなおさざるを得ない時間が延々と続くんだ。
そんな苦しみの日々の中・・・ある日ふと、懐かしい・・・懐かしい夢を見たんだ。
子供の頃に夢見た機械の国の夢を。
余りに懐かしく、また楽しい夢だった。
そのせいで、わしは目が覚めてからもその夢のことを考えるようになった。」
老技師はそこで話を区切り、目を閉じて詳しく思い出しているようだ。
そして→44
36
「そうそう、うちの旦那がこんなもの探し出してくれたわよ。」
そういって持ち出した資料は、あの学園長の物だ。
「うちの旦那は当時から資産家だったんだけど、あの学園にも寄付していたそうよ。」
「お金と結婚したんですか?」
「・・・こんガキャ・・・しまいにゃ怒るよ?」
やーめーてー・・・。
見てみぬ振りして資料に専念する。
・・・これは・・・。
手がかりらしきものを見つけ、それと悪友の資料、そして私の知識を組み合わせて考察する。
「ねえお父さん、この人・・・」
「しっ!」
「・・・」
無言でにらみ合っていた(らしい)二人。
「どの道ああなったら声は聞こえてはいないのよ。」
そうです→7
37
さて、嘘を看破する時間が来た。
するといきなり回りの全てが動きを止めた。
「・・・もしかしなくても学園長ですね。」
「察しが良いな。
あいも変わらず可愛げの無い。」
少し予想がついていたが、彼が姿を借りているのは、少年の傍に寄り添う精巧なロボットだ。
「手向かう時点で、どう転んでも可愛げなんて無いでしょうに。」
「・・・可愛げの無い教え子に忠告してやろう。
お前が嘘、と言った時点で、お前の世界からその対象は嘘となる。
例え本当であってもだ。
だが、本当であることを嘘といったお前はどうなると思う?
正しいものが正しく映らない世界になる、つまりお前の世界は嘘になるわけだ。
お前はこれから先、私の作り上げた嘘の世界を見誤った時点で、我が軍門に下るというわけだ。」
「・・・なるほど。」
「せいぜい間違わぬことだな・・・」
そして不意に回りがまた動きだす。
「どしたい、相棒?」
身振りでなんでもないと相棒に伝える。
さぁ答え合わせの時間だ→80
38
探索を続けると言っても、足から入った以上、行けるのは嫌だろうがなんだろうが上しかないのだ。
お互い息を切らし、どちらからとも無く休憩をする。
当然片方も疲れているので、何も言わずに付き合う。
それにしても・・・本当・・・階段は辛い・・・。
「ぜぇ・・・はぁ・・・なぁ・・・。」
「ぜぇ・・・はぁ・・・なんだ・・・?」
「ぜぇ・・・はぁ・・・今・・・どこら辺だ?」
「ぜぇ・・・はぁ・・・肩位まであがってこれたんじゃねえの?」
悪友が近くの窓から外を確認する・・・私は高いのは駄目だから確認なんて出来ない。
「勢い良く・・・進んだり・・・止まったりしている・・・。
はぁ・・・こりゃ・・・まだ・・・足だな・・・。」
「・・・はぁ??・・・まじか・・・。」
「はぁ!?」って強く言いたいところだが、疲れ果ててそれ所ではない。
これを登るのかぁ・・・やだなぁ・・・。
ぐったり→52
39
ある朝懐かしい学生時代の夢を見る主人公。
学生時代、よくつるんでいた3人の夢。
甘酸っぱい思い出に思いを馳せつつ仕事に向かう。
少し送れて仕事場に着き、その事で助手にねちねち小言を言われる。
お偉いさんの視察があって、その案内をさせられたことを根に持っているようだ。
そしてそのお偉いさんはまだ主人公を待っていた。
客として主人公を待っていたのは学生時代のマドンナ。
マドンナの旦那が出資者筆頭だったのだ。
ただの偶然か?
しかも二人は同じ懐かしい夢を見たと言うことに驚く。
何故二人同じ夢を?
疑問は晴れないが、考えても答えは出ない。
二人はそのままいつもの日常に戻る。
そしてその夜・・・またあの頃の夢を見た。
40
その後、二人で動く城を歩き回って分かったことが幾つかある。
一つめ。
殆ど揺れる事がないこと。
どういう仕組みでそうなっているのかは分からないが、とにかく揺れない。
二つめ。
普段揺れないが、極たまに凄く揺れること。
余り気持ちの良い感覚ではないが、とにかく揺れる。
揺れる種類としては、グラグラ、ではなく、ゆ~~~ら・・・ゆ~~~ら。と言う感じで弄ばれている感じと言い換えても良い。
動く巨人は特に倒れたり、傾いたりはしていない。
意図的に何かに揺らされているような感覚なのだ。
三つめ。
機械で出来た人・・・と言うかまるまんまロボットが生活している。
と言っても、こちらに全く興味を示さない。
話しかけようが、道を塞ごうが、まるで意に介さず、自分の行動を止める事はない。
「あの少年はこんな所で生活しているのか・・・。」
「・・・っつーか、俺の目が悪いだけなのかな?
前からちょくちょく遠目に観察していたんだが、中に何か居る気配は無かったんだがなぁ。」
これからその理由も分かるかもしれない。
とにかく探索を続けよう→38
42
三日目に見た夢でまた三人が出会う。
これからの方針を確認しあい、目を覚ます。
仲の悪い娘とマドンナを会わせたくなくて気が重い。
悩んだ所でやることは変わらないので職場に急ぐ。
職場では助手が娘の相手をしようと頑張るが、一蹴されて少しいい気味。
自室に行くとマドンナが既に来ていて、娘との挨拶で火花が散る。
関わりたくないので見ない振りして仕事にかかる。
そして色々な資料から推察し導き出された結論を元に、見えなくされた悪友と交信出来るようにする。
試みはうまく行き、見えない悪友と言葉を交わすことに成功する。
悪友からは主人公の身の上を心配されるが、後には引けない。
この態度にまた女同士の戦いが繰り広げられるが、その隙に夢の中にアクセスする機械を作る。
喧嘩の終わらないうちに夢の中へと突入。
夢の中では案の定、学園長が支配者のように振舞っていた。
二言三言言葉を交わし、罠が待つであろう、夢のどこかに落とされる。
落とされた先で悪友と再会し、これからのことを確認する。
夢の世界にちりばめられた嘘を暴く冒険が始まった。
ここからは一部の終わりまで、ショートバージョンはありません。
三日目ノーマル→63
「あ、はい・・・。」
「・・・あのおばさんも?」
「・・・・・はい。」
眉間にしわを寄せる娘に恐怖していると、
「私も明日学校無いからついて行く。」
「・・・へ?」
「ロマン馬鹿さんにも興味があるし。」
娘が仕事場にやってくるなんて何時以来だろう?
うちの嫁さんが娘が手に余ると職場に押し付けてきた当初は、よく入り浸っていたものだ。
それがいつの間にかぱたりとこなくなって・・・。
「いいよね?」
あ、はい→53
44
「ある日白昼夢、と言うのだろうか?
まだ日の差し込む時間に見た夢だと思う。
回りの全てが停止してしまう夢。
その夢の中で誰かがわしに囁くんだ。
あの楽しい夢を見続けてもいいのだ、と。
最初は訝しんで無視していた。
しかし、日に何度も誘う声が聞こえる。
次第にわしは声も怪しさより、あの懐かしい夢をもう一度みたい欲求に駆られてしまった。
そして・・・見たい・・・ただ一瞬そう思ったんだ。
そしたらどうだ?
なぜか毎日のようにその夢を見れるようになったんだ。
あまりの嬉しさ、楽しさの前に、何も疑問に思わなかったね。
手から生み出される全てのものが、まるで生きているかのように動き出す。
そんな夢をずっと見ていられるんだから。
いつしか、わしは体さえ無くし、機械の王国が繁栄していく様だけを見ていた。
・・・だが幸福は永遠には続かない。
わしの王国はどんどんと小さくなっていき、最高傑作であったこの機械の巨人に押し込められる形で消えていった。
・・・後は何故か子供になっておぬしらに会った、というわけだよ。」
今度はこちらの番ですね→74
45
急いで研究所からでてタクシーを捕まえ、家まで直行する。
結局家に着いたのは21時を回っていた。
ガチャガチャ・・・。
鍵を開け、家に入・・・
ガンッ
・・・ドアガード・・・
暗がりの奥に娘がゆらり・・・。
「あ、あの・・・ただいま・・・帰りました。」
「どちら様でしょう・・・?
うちには遅くなる時に電話しない人は住んでおりませんが?
勝手に人様の家の鍵を開けないで頂けませんか?
治安を維持する方々をお呼びすることになりますが。」
サー・・・
ああ、血の気が引くってこういうことをって・・・違う。
弱った・・・24
46
「あら・・・素直なのね。
昔からそれくらい素直なら・・・」
小言はうんざり、と身振りで示すと、だから貴方はとかぶつぶつ言いながら媒体を渡してくる。
今は小言よりは中身が知りたい。
・・・
・・
・
「こんなことが現実に・・・。
いや実現なんで出来るものなの??
これ・・・何かの冗談よね?」
「だと思うか?
実際あいつが夢の中に囚われているのなら、それはもう現実だ。」
「でも夢の中で会ったってだけでしょ?
それとこの文章の内容が事実だというのとは・・・」
何もいわずじっと彼女を見ると、ああはいはい、という感じで手を振る。
何が書かれていたかというと→81
47
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
「・・・ここだよな?」
「・・・ここだな。」
目の前には心臓らしきものがある。
しかし・・・。
「・・・ピンクだな。」
「・・・ハートだな。」
どう見てもピンクのハートのオブジェにしか見えない。
管は幾つかついてるが、電気的、もしくは機械的に意味があって接続されているとは思えない。
「・・・外れか?」
「・・・大外れだな。」
がっかりしてそこを後にすることにした。
頭の部分に戻る→34
目の位置に移動→29
首の位置に移動→4
右手の位置に移動→62
左手の位置に移動→20
肝臓の位置に移動→77
左足の位置に移動→51
「お互いな・・・。」
お互い言い返す言葉がなく、しばしの沈黙。
「娘はいくつになったんだっけ?」
「16になったよ。
美人で自慢の娘だ。」
「・・・そういうのは本人に言ってやれよ。
まぁ聞いてるだろうけど。」
あ゛・・・そうだった。
悪友は何も言わずただにやにやしてやがる・・・嫌味なヤツだ。
そんなやり取りをするうちに時が過ぎ、荒れた息も整ってきた。
よし、動くか→40
遠くでこちらを見ていた人物はいきなり話しかけられたからか、飛び上がり逃げてしまう。
「ちょ・・・おい!何逃がしてんだ!」
「逃がさないようにするったって、飛びつくつもりだったのか?
足がくがくなのに?」
「う・・・それもそうだな・・・。」
長い沈黙・・・というか息を整える時間を取る。
→73
娘がまだパニクっている・・・。
悪友の方にも悪態ついているようだ・・・。
同級生は何か驚いた顔をしているな・・・。
何か驚くようなことがあったんだろうか・・・?
・・・
・・
・
「迷える子羊よ・・・目覚めなさい。」
目の前には位の高そうな聖職者。
「迷える子羊・・・ね。
・・・その迷わせている張本人である悪魔は、貴方ですか?」
そう・・・聖職者のような身なりはしているが、私に声をかけたのは学園長だ。
「・・・色々嗅ぎまわっているようだな。
お前の友人のようになりたいのかね?」
「やはり貴方の仕業ですか。」
「私自身がそのようなことをする必要はない。
この世界がそれを選ぶのだから。」
この世界の支配者然とした口ぶりで返すあたり、やはり黒幕と言うことだろう。
それより何より、昔見た学園長より若返って見える。
親玉発見!→30
51
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
「なぁ?」
「うん?」
「なんで右足じゃなく左足って分かるんだ?」
「・・・お前方向音痴だろ。」
「何で知ってる!?」
わからいでか。
とにかく、得体の知れない場所や建造物では、何となくの目印や方角を把握するものだ。
そんな基本的なことが分からないとは・・・。
方向音痴でなければなんだと言うのだ。
「ま、いいや。
しかし揺れないもんだな、さすがロマンロボ。」
「何だよそれは・・・。」
等と無駄口をたたきながら色々調べるも何も出てくることは無い。
流石に一番下なので外を見ても大丈夫だろう。
「・・・・・ヒィィィ」
「ちょ、マジかお前。」
よくよく考えれば踏み出す足の高さは人間や動物のそれと考えてはいけなかった。
山ほどもある巨人の歩む足の高さが、軽く数階建てのビルを超える位、想像出来たはずなのに。
「・・・はぁ・・・何も無い。」
そう、何もなかった。
自分の浅はかさへの怒りだけが残った。
頭の部分に戻る→34
目の位置に移動→29
首の位置に移動→4
右手の位置に移動→62
左手の位置に移動→20
心臓の位置に移動→47
肝臓の位置に移動→77
52
そのとき目の端に何か動くものを捉えた。
相手に気付かれないようにして、様子を伺う。
「・・・ねえ。」
!!
おっとびっくりだ。
声をかけてきたのは、ここで感じた人の気配の主、白いランニングシャツにベージュの短パン姿の、いがぐり頭の少年だ。
服装はなんだか妙に汚れているが・・・機械の巨人の中に住んでいることに由来する油汚れか?
まさか向こうから声をかけてくるとは。
余りにへたれたおっさん二人組みに、脅威を感じることは無かったのだろう。
「しんどいの?」
「俺らのようなおっさんには、この縦長の構造物をのぼるってのは厳しいんだよ。」
悪友が吐き捨てるように愚痴を少年に垂れる。
最低な大人だな・・・って、心の中で「そうだそうだ」と言ってる私も同類か。
「僕の友達に運んでもらう?」
なんですと!?→28
夢の中で悪友がニヤニヤしながら私を小突く。
「何々?何の話?」
「いや、娘がな・・・俺のだけど。
明日研究所にやって来るんだと。」
「え゛?それってまじなの?
私あの子に余り好かれてない・・・ていうか、凄い嫌われてる気がするのよね。」
「それよりなんでお前はそんなこと知ってるんだ?」
「夢にはさ、強い感情なんかも影響するだろ?
そういうのを感じ取ったり出来るわけなんだな、これが。」
「便利~・・・っていうか、それプライバシーの侵害よね。
うわー・・・」
「そんな気持ちの悪いもの見るような目でみんなよ・・・。
関わりの少ない奴の感情なんて読めないっての。
今お前らが俺との夢を強く意識できるのは、俺の件がずっと頭にあるからさ。
お陰でこうやって苦労せず、お前らと夢の中で会うことが出来るんだがな。」
「そろそろ時間か?」
「ああ・・・なんとかこの時間をのば・・いか・・・て・・・れ」
時間切れ→19
「それで・・・。」
「・・・。」
「とにかく、あの中に俺の研究データのほぼ全てが入っている。
中身を確認してみてくれ。」
「わかった、直ぐ確認しよう。
・・・にしても何でそんな所にデータを?
別に研究始めた当初から狙われていたわけでもあるまいに。」
「ロマンって奴だよ、ロマン。
わかるか?」
「あーそうだったわねー・・・昔から・・・何とか病・・・」
「やめろ!ロマンだって言ってるだろ!」
わかると言いかけが辞めておいた。
すまん、友よ→82
55
大きな音と共に回りの景色が一変する。
回りに見えるのは、中世~近代のような風景にも見えるが、和洋折衷である。
おまけに車や飛行機まで飛んでいて、なんだか混乱する世界だ。
何より私達を混乱させたのは、
「・・・“嘘つくことは良い事だ”・・・だぁ?」
町で最も荘厳な建物に掲げられた旗には、でかでかとそのように書いていたのだった・・・。
・・・続く
あとがきへ→後書き
56
「とにかく資料を読み漁ってみるよ。
このままじゃまだよく分からないからね。」
「こっちも使えそうな資料を集めておくわ。
私、そっちの話は今では専門外だから、読むのは任せる。」
うなずいてまた資料を読むのに没頭する。
軽いため息が聞こえた気がしたが、今の私の興味はそこには無かった。
・・・
・・
・
読んでいる最中に彼女が集めてくれたのだろう資料がメールで届く。
膨大な数であったが、かぶる部分も多く、多くは読み飛ばすことが出来た。
そして・・・かすかな手がかりを見つけることが出来た。
内心ガッツポーズを決めつつ、外が真っ暗なことにようやく気付き戦慄した。
やばい・・・遅くなると連絡する約束なのに・・・。
慌てて電話をする。
「・・・はい。」
「あ、あの・・・遅くなり・・・ます・・・」
「・・・・・・・・・そう。」
ブツッ・・・ツーッツーッツー
ピーンチ!→45
「す、少し寄り道してまいります・・・」
と言うだけ言って、脱兎のごとくその場を後にする。
近くのアクセサリーショップで若者向きの可愛い小物と、無理やりひったくって鎖が切れ掛かっているロケットの修理を頼む。
ロケットの修理は幸いあまりかからないようだったが、この際チェーンを新しいものにした。
古いチェーンを処分するかどうか聞かれたので、それは別に包装して欲しいと頼む。
もしこのロケットの全てが大事なものだったなら、この古いチェーンを勝手に変えたと言えば怒るだろう・・・。
店の好意で、古いチェーンの方も汚れを落とされて綺麗になっていた。
無理に新しいものに変える必要は無かったかな・・・?
とにかく仕上がったものを手に、また急いで家に帰る。
ピンポーン・・・・・・・・・・・・ガチャ
「・・・何か御用ですか?」
うう・・・負けるな私・・・。
「こ、これを・・・お納め下さい・・・。」
差し出された物を受け取りもせず、じっと見つめる娘。
早く受け取ってー・・・。
更にしばらくの沈黙の後、ようやく受け取ってくれる。
成功かな・・・?→26
58
研究所に着くまでの数分の間、特に会話は無い。
まぁ・・・それが普通だろう。
欲しいものや趣味が一緒であるわけでもないのだから。
・・・
・・
・
研究所に着くと、あの小うるさい助手がすっ飛んでくる。
「主任!今日もお客様が来てますよ!・・・ってあれ?
娘さんも来たんですか?」
ぺこりと頭を下げる娘。
何故かハイテンションになる助手が娘の相手を務めようと、必死に何かしているようだ。
・・・こいつに任せるのもなんなんだがなぁ・・・。
「でねでね!これが」
「あの・・・助手の人?暑苦しい。」
ピシャリ
ちょっ・・・→83
「うひゃぁ・・・俺ぁ別に高所恐怖症でもなんでもないが、流石に高すぎだな。
見るか?見ないよな。」
聞くんじゃないよ。
それにしても位置としてはあの巨人の頭の中の辺りだが・・・特別何かあるわけではないようだ。
何かしら脳の代わりになるものとか、中央演算装置っぽい何かがあるものだと思っていた。
もっとも、機械が人間と同じようなつくりである必要は無いわけで、ここに脳らしきものが無いのは当然と言えば当然なのだ。
悪友の方も、何も見つからないことにがっかりしているようだ。
少年はと言えば、ここでも何やら壊れたものを分解しては組み立てなおして、新しい何かを生み出していた。
・・・そう言えば私達だけで居た頃に感じた、あの嫌な長い周期の揺れを感じることは無くなったようだ。
あれはなんだったんだろう?
「まぁぼうず、この巨人が何で動いているか、分かるか?」
少年はきょとんとした顔で悪友を見て、ふるふると頭を振った。
まるで巨人が動いていること、いや生きていることに理由なんて要るの?と言いたげな表情だ。
「打つ手無しだなぁ。
とりあえず巨人の中をあちこち移動してみるしかないな。
ぼうず、このロボット借りてても大丈夫か?」
少年はにっこり笑ってうなづく。
しばらくはこのロボット達は私達の言う事を聞いてくれるようだ。
探索する場所について、登ってきた足は除外しても良いかも知れない。
登る途中気になった場所や、重要であるだろう場所を選定しよう。
移動を開始→34
60
帰る時間になると、やはり助手を避けるように早々と帰宅する。
あいつしつこいんだもん・・・。
・・・
・・
・
帰宅し、晩御飯を食べ、風呂に入り、そしてベッドに入る。
今日はあの夢と出会いのせいで、他の事柄が何も頭に残らない。
こういう時はとっとと寝るに限る。
娘の方も察してくれたのか、余り構わずに居てくれた。
・・・無関心であるだけだとか思いたくない。
・・・
・・
・
「・・・だから言ってるだろぉ?」
またしても夢の中で悪友が姿を見せる。
またあの懐かしい夢の中・・・?
どうなってる?→15
「今日は懐かしい夢を見ちゃってね。」
「懐かしい・・・って学生時代の?」
「!?」
二人とも目を丸くして視線を合わせる。
「・・・偶然じゃないのかしら?」
「分からない。
でも偶然じゃないとしたら、あいつも見ているはずだよな。」
「・・・そうね。
どういう意味があるのか・・・。」
二人で思案したものの、結論が出るはずも無く、この日はこれでお開きとなった。
彼女を見送った後、助手の小言を聞きたくなくて、自室に閉じこもる。
・・・まぁそれ以外に、夢と脳機能に関する論文を読み漁るためでもあったが。
そして時が過ぎ・・・→60
62
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
手の末端まで来ると、相当に振り回されるのだろうと思っていた。
が、実際は殆ど揺れることはなかった。
理屈は分からないが相棒いわく、
「ロボットやロマンにそんな無粋を言うんじゃねえ。」
とのこと。
まぁこの夢の持ち主が、こういったロボットに何かしらの夢を抱いていた人物なら別に不思議は無いか。
例の如く外の様子は見れないので相棒に任せる。
「・・・何も無いな。」
徒労に終わったか・・・。
ここから一度頭まで戻るには距離があるな。
ここから別の候補地を選ぶべきだろう。
頭の部分に戻る→34
目の位置に移動→29
首の位置に移動→4
左手の位置に移動→20
心臓の位置に移動→47
肝臓の位置に移動→77
左足の位置に移動→51
「そうとも言えるし、そうとも言えない。」
「どういうことだ?」
「人が夢を見始めると、その夢に引っ張られることがあるからだ。
夢って言うのは内と外みたいのがあって、外側ってのはわりかし区別というか壁が少ないんだ。
夢が漏れる?って表現が合うのかな・・・。
人が同じ夢を見るのは、その外側部分でつながって合流したりするんだ。
お前達を呼び寄せたみたいにな。
で、現在自由に行き来できるのは、そうだな、あのおっさんの支配下にある夢ってとこかな?」
「分かりやすくていいな。」
要はここは本当の夢ではなく、支配された嘘の混じった夢の中って事だ。
むしろ引っ張られることの方が危険だな。
嘘のない世界で嘘を探すのは無駄だからな。
「この夢の持ち主は元々は何かの技師らしくてね。
全てのものが機械でできているんだ。
生き物も含めて全てね。」
「・・・お前好みの夢だな。」
「そうなんだよ!
わくわくが止まらなくってさ!
・・・あ?うっさいよ!
ロマンは止められない!」
もしかしなくても外野と会話しているようだ。
「それとな、以前は引っ張られてたまたま来れる程度だったけど、今は好きな時に来れる。
つまり今は支配下にある夢って事だ。
嘘を見破る旅なら、ここは最初の場所にうってつけだろう?」
では機械の世界に行こう→18
音もなく足元に黒い穴が開き、すとんと体が落下を始める。
「・・・瞬きも表情も変えないとは・・・可愛げのない小僧め。」
・・・
・・
・
ペチペチ・・・ペチペチ
「お~~~~~い」
「・・・
う・・・」
「う?」
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「うわあああああああああ!!!
ってうるせえよ!」
ぱすーん!
どことなく間抜けな破裂音が頭で炸裂する。
「はっ!・・・ここは?」
「夢の世界へようこそ。」
ん?悪友?→16
「・・・どうやってだ?」
「わかんねえけど、何でも3分程度なら何とか・・・」
「・・・どのタイミングで?」
ズズン・・・シーン・・・
「「いきなりかあ!」」
二人で絶叫をハモらせ、全速力で巨人の足元へと走る。
巻き込まれない距離で眺めていたから、結構離れてるんだよここ。
必死の形相で二人のおっさんが巨人の足元に全力疾走。
動き出す前に何とかたどり着くことが出来た。
足元まで行くとちゃんと入るための仕掛けもあって、どうにか入ることが出来た。
ぜぇはぁぜぇはぁぜぇはぁぜぇはぁ
「くっそ・・・この歳で・・・全力疾走とか・・・馬鹿か・・・」
「そ・・・外に言え・・・っていうか・・・タイミング・・・一緒に決めろよ・・・馬鹿・・・」
「ああん??・・・はぁはぁ・・・俺が・・・悪いのか?」
ぜぇはぁぜぇはぁぜぇはぁぜぇはぁ
無駄口もいい加減しんどい・・・。
私達は息を整えるまでただじっとしていた。
じー・・・
・・・悪友と目を合わせる。
誰かがこちらをじっと見ている。
ここは一つ・・・
せーので飛び掛る→5
自分で声をかけてみる→49
悪友に声をかけさせる→9
「このまま夢の中に入る方法を考える。」
『デキルノカ?』
「人の見る夢で、ならな。」
「・・・あの馬鹿がロマン馬鹿なら、こっちは研究馬鹿ね。」
「本っ当・・・」
二人の冷たい視線が突き刺さる。
『アノユメヲ ジンイテキニ ミルツモリカ・・・』
「そうなる。」
「それ危ないんじゃないの!?」
「!!そうなの!?」
「どういう理屈で夢に引き込まれているのか、なんとなく分かっているから大丈夫だよ。」
「駄目だからね!お父さん!」
『ミミガ イタイネ・・・』
「・・・友達が、長い間、苦しんでいるんだ。」
助けるさ→71
67
『セッカク ジカンヲ キニセズ アエルヨウニ ナッタノニ ワルイ。
シラセテ オクベキ コトガ アルンダ。』
「私が狙われ始めたことか?」
「「!!!」」
『・・・キヅイテ イタノカ』
「最近回りの様子が変だからな。
アレはお前の言う夢を1度、ないし2度見たもの達だろう?」
『ヤツノ メニ ナッテイル』
「ちょっと何よそれ!
聞いてないわ!」
「何それお父さん!
危ないことしてるんじゃないの!?」
二人を制止して答える。
「こいつがこうなった時点でなんとなく予想はした。」
そうとも→66
「ほかに誰か住んでいるのかい?」
少年はふるふると首を振る。
「ここで機械じゃない人、見るの初めて。」
「機械で出来た人・・・?は居るのかい?」
「おいらの友達。」
否定しないな。
機械で出来た友達が居るってことなんだろう。
「なぁ・・・」
悪友が続けて話しかけようとした瞬間、
ががんっ
私達の居るこの動く城が大きく揺れた。
途端に少年が駆け出していってしまう。
「あ、おーい!」
悪友の呼びかけにも立ち止まらず走り去ってしまった。
追いかけようにもおっさん二人ともまだ息が上がっている。
まずは休息だ→48
69
「貴方も車にしなさいよ・・・。
っていうか、やっぱりあったの?データ。」
「君がここに来てその質問をする時点で、あの夢がただの夢でないことの証明になっているだろう?」
「その理詰めのしゃべり方・・・かわらないわね。」
「お褒めに預かりどーも!」
まだ何か言いたげな同級生を尻目にロケットの中を探す。
色々調べてみたがそれらしきものが見当たらない。
あの夢は嘘ではなかったはずだが・・・。
「あのなんたら病のロマン馬鹿なら奇をてらうはずよ。
貸してみなさい。
・・・。
これ・・・がそうね。」
彼女が取り出したのは写真だが・・・。
「これ、写真のように見えるけど、記憶媒体よ。
効率の良い素材ではないので知られていないのだけど、普通の小型記憶媒体と同じようにデータを読み出せるの。
というか、あいつよくこんなもの、当時から持っていたわね。
とにかく、材料工学のスペシャリストである私が言うのだから間違いないわ。」
疑わないさ→46
70
懐かしい夢の中でマドンナが「昨日の続きなの?」と問う。
それに対し悪友がまるでそれに答えるかのようにふるまう。
そこでこの夢がただの夢でないことを悟る。
悪友は「娘の持つロケットを調べろ」と言い残し、夢は終わる。
起きて直ぐ、娘にロケットの所在を尋ねる。
すると肌身離さず持っていたのか、胸元にかけてあった。
取り出そうとする娘からロケットを引ったくり、職場に直行。
既に職場に来ていたマドンナとロケットを調べる。
調べても分からなかったが、マドンナが写真こそが記憶媒体であることを見破る。
悪友の資料には「夢と現実の境を無くす研究」についての言及があった。
「夢の世界を現実に実現」するのではなく「現実の世界を夢に引き込む」もの。
実現方法として、例えるなら万人が知らないと言えば、その事象は無いも等しい。
夢の世界はある種万人に共通する認識で、この中で認識を書き換えることで実現すると言う。
これを悪友は「夢の中に引き込む」と表現している。
悪友の理論は完成されていないが、これを悪用され、悪友は夢の中に引き込まれたようだ。
情報が足りず、資料を取り寄せ、読み込むことに没頭し、時が経つのを忘れる。
既に外が暗くなっていて、遅い時は娘に電話する約束をすっぽかしたことに気付く。
慌てて電話をかけ急いで帰るも、娘の怒りは頂点に達しており、家に入れてもらえない。
何より、朝、娘の胸元からロケットをひったくると言うセクハラまがいの行為にも怒りの種があった。
何とか物量作戦でご機嫌を取り、事なきを得る・・・と思われた。
その夜の何気ない一言から、次の日は娘も職場に連れて行くことになる。
「おばさん!ちゃんと止めてよ!」
「むーりー・・・ってか、誰がおばさんか!」
二人を尻目に夢に入る準備を進める。
あの二人の理論ならこの値をこうして・・・。
うん、うまく行きそうだ。
このまま時間をかけたら、娘に実力行使に出られかねない。
脳波測定器を改造した試作機をつけてっと。
「あっ!ちょっと!お父さん!何してるの!?」
「これを無理やり外さないでくれよ。
最悪、脳が焼けちゃうからな。」
「えっ!?あ、ちょっと!」
こう言っとけば、無理に外したりしないだろう。
脳が焼けたりはしないけどな。
さて、数値をセットして電圧をかけて・・・。
ブ・・・ウウウウウンン・・・
いざ夢の中へ→50
72
最初から対象が絞られていたとはいえ、もし他に人間が隠れていたりしたらどうだっただろう?
今後はもう少し慎重に決断を下す必要があるだろう。
ともかく嘘を暴く時間だ→75
「16になったよ。
美人で自慢の娘だ。」
「・・・そういうのは本人に言ってやれよ。
まぁ聞いてるだろうけど。」
あ゛・・・そうだった。
悪友は何も言わずただにやにやしてやがる・・・嫌味なヤツだ。
そんなやり取りをするうちに時が過ぎ、荒れた息も整ってきた。
よし、動くか→40
74
私達は技師に事の顛末を、細かく、分かりやすく説明して聞かせた。
ある人物の実験台にされたこと。
その影響で技師自身がまるで世界から消えたようになっていること。
次目覚めた時、技師がどういう状況にあるか、想像がつかないこと。
「今の見た目からして、実はもう死んでいる、なんてことはねえと思うぜ・・・ごふぉっ!」
軽く、いや、きつく脇腹を殴っておく。
「くっ・・・てめえ・・・」
「ふむ・・・そもそも既に一人ぼっちであったようなもんだからな。
例え生きていようと死んでいようと気にすることは無かろう。」
「すみません。」
「よい、気にするな。
事実、もう目が覚めかけてきておるんだろう。
だんだん・・・と・・・消・・・」
言葉を紡ぎ終える前に、技師は姿を消していた。
「どうなるんだろうな。」
「どうなるんだろうな・・・じゃねえよ!
痛いわばかたれえ!」
「彼が目覚めるということはこの世界はどうなるんだろうな。」
「話をそらすんじゃ・・・!
・・・そういえばどうなるんっ・・・」
どうなるも何も→76
75
「少年、君は子供なんかじゃない、その古びたスパナの良く似合う、熟練の技師なんだよ。
思い出して、自分が本当はどんな姿でどんな人物だったかを。」
「・・・ぼ、僕・・・は・・・」
少年はうろたえ、手にしたスパナと私達、そしてロボットを交互に見る。
がくがく震えながらスパナを抱きしめ、目をぎゅっとつぶる。
「・・・!!」
少しずつ、本当に少しずつだが少年が大きくなり、そして年老いていく。
見た目の変化は緩やかだが、時間にして5分とかかっていないだろう。
余りの光景に私達は声を失っていた。
「・・・わしは・・・」
すっかり年老いたその熟練の技師は、ぽつりぽつりと身の上を語りだした。
彼の身の上は→35
76
現在気が遠くなっている最中だ・・・。
突然機械の巨人が消え、というか、彼の創造物が全て消え、落下中である。
「あ~~~~。
い~ったい~~。
なん~~め~~とるあるんだ~ろ~なぁ~~。」
知るかぼけなす・・・。
私はそれど・・・うおっと気が遠くなる・・・。
パンッパンッパンッ!
「痛いわ!ボケナス!」
「俺だって痛かったわ!」
等と罵り合っている内に、どうも落下速度が緩まった?のか。
「「・・・・・・」」
二人睨み合いながらも、周りに気を配る。
「落ちなくなったな・・・。」
「そうだな・・・。」
なんとなく、足が地に着いている様に感じるが、回りに何も見えない。
私達二人だけが宙に浮いている、そんな感じだ。
バンッ!→55
77
来たのが二度目なら読み飛ばして移動しよう。
二度目でなければ、
「問題の場所だよな・・・。」
「いくか・・・。」
登ってくる時に妙に大きなスペースが取られていて気になった。
意を決し突入する。
・・・
・・
・
肝臓と言えば栄養を貯蔵する場所ではあるが・・・。
「・・・貯蔵庫・・・なのか?」
「・・・もしくは冷蔵庫だな。」
この場所には所狭しと食料が貯蔵されている。
そしてロボット達がその管理をせっせと行っている。
喰わないだろおまえら・・・。
「ここも外れかぁ・・・。」
次だ次。
頭の部分に戻る→34
目の位置に移動→29
首の位置に移動→4
右手の位置に移動→62
左手の位置に移動→20
心臓の位置に移動→47
左足の位置に移動→51
78
少年が腰に下げたものを見せてくれた。
それはとてもとても古びた工具だった。
「へぇ?えらく古い調整式レンチだなぁ。」
確かに。
ここにあるものは殆どが壊れていても、年季を感じさせるものは無かった。
少年はとても器用に調整式レンチを操り、そこらへんにあった壊れた何かを組み上げ直している。
すると言葉通り見てる間に、機械で出来た鳥が生まれた!
しかも普通に飛び回ったりしている。
「・・・驚いた・・・。」
「うっはー!すげー!」
少年は照れ隠しでまた鼻をこすっている。
「そろそろ着くよ。」
そういえば相当な速さで登っていたのだった。
考えないようにしていたが、あの巨人の最上部とはどれほどの高さだろうか。
くわばらくわばら・・・→59
79
何より重要だったのは、人間が少年一人であることを確かめることだった。
他に人間が居たならば色々考える幅が広がってしまっていた。
さあ嘘を暴く時間だ→75
80
今回のケースはどう見ても、いや、相棒の話からしても対象は限られている。
81
そこに書かれていたのは夢と現実の境を無くす研究についてだ。
境が無くなる、というのは多少の解釈の違いがある。
なんでも思い通りに描ける夢の世界を現実に、というのではない。
むしろ逆で、夢の中に現実を引き込むというのが正しい。
これが本当であるのなら、あいつが夢の中に囚われているのもうなずける。
ただ、実現方法がまるで理解できない。
あいつの理論をそのまま鵜呑みにするなら、こういうことになる。
万人が万人、砂糖は甘いと知っている。
砂糖は甘いから砂糖なのだ。
しかしこの認識を別なものにしたら?
万人が万人、砂糖は酸いと感じたら?
砂糖が酸い、ならそれは砂糖ではない、何か別のものだろう?
あいつの理論は完成しては居ないが、どうもこんな風に夢の中で認識を置き換えることが出来る、という事らしい。
「ロマン馬鹿は何に置き換えられたのかしらね?」
分からない→14
82
「そろそろ時間かな。
いつもこれくらい時間が経つと、お前達との接触が不意に終わってしまうんだ。
娘のことありがとう、そして頼む・・・俺の・・こ・も・・・」
・・・
・・
・
朝か・・・急いであのロケットを調べよう。
コンコンコン
「お父さん!おきてる!?」
ガチャ!
「わ!・・・びっくりさせないでよ!」
いきなり扉が開いて驚いた様子の娘の肩を掴み
「ななな・・・なによ!?」
「お前が大事にしていたロケット!
今どこにある!?」
「・・・?ここだけど・・・」
胸元から→31
83
はっきりいわれてしまった助手はがっくりとうなだれ、その場を後にする。
哀れ・・・でも・・・ちょっといい気味。
「まとわりついてうっとうしいんだもん・・・。」
娘の頭をぽんぽんとなででやる。
娘はなんで?って顔してたが良いんだよ、知らなくて。
その後自室へと向かい、先に来ていた同級生と挨拶する。
「いつも私より遅いわね。」
「挨拶とはいわないだろ、それ。」
「・・・」
無言で同級生を注視する娘。
「えー・・・と、娘ちゃん、睨むのやめて貰える?」
「どーーーも・・・お久しぶりです、おばさん。」
「・・・お久しぶりね、小娘・・・。」
顔をひくつかせながら同級生が返す。
っつか、怖いんですよ貴方達・・・。
仕事しておーけー?→36
後書き
今回も無駄にスケールを広げてしまい、収拾つかなくなってる感がある。
が、前回は全部仕上げてからだったので恐ろしく時間がかかった反省を踏まえ、章立てにすることに。
そもそもアイテムや何もかも無い、どちらかと言うとifを楽しむ読み物のようなものなので、続く必要ないなぁ、と。
読み飛ばし機能ではないけど、短く文章をまとめる手も作ってみた。
試行錯誤だらけなのは毎度のことなので、どうかご容赦を。
ちなみにマーテルは書いてて楽しかったけど、今回は前回より制限がない分悩みが多い・・・。